第60章
フェリシティの視点
クリスマス当日、お客さんが来ると思ってたんだけど、ママが誰を呼ぶか聞いたら、速攻で逃げ出したくなった。 エリヤナと彼女の両親が来るって聞いて、正直、顔を合わせるのが恥ずかしくてさ。
始まりは、クリニックに入って、見ちゃいけないものを見たことからだったんだよね。あの日の自分の気持ちが、なんだか分からなくなって。
めっちゃ怖かったんだ。叫びたいとかそういうんじゃないんだけど、熱が出たみたいな感じで、それが頭に広がって、意識が遠のいたっていうか。
頭の中には、マジで嫌な考えがいっぱいあって、自分が何者なのか分かんなくなっちゃって。エリヤナに会うと、またあの気持ちが蘇るんだよね。
変だって分かってたけど、自分のことで色々あって落ち着かなくて。だから、自分のコンドミニアムに帰ることにしたんだ。エリヤナには本当の理由は言わなかった。何を言われるか怖かったから。それと、
何をしていいか分からなかったんだよね。仕事に行こうかとも思ったんだけど、秘書が必要だし。クリスマスだし、彼女には仕事に来て欲しくなかったんだよね。
休日に上司に仕事頼まれたら、誰だって嫌じゃん?
「考えろ、フェリシティ、考えろ!」 部屋の中をウロウロしながら、心の中でつぶやいた。 なんかしないと、どっか行かないと、逃げるための言い訳ができないんだ。ママのことだから、まともな理由がないと許してくれないだろうし。
何か邪魔できることを考えたんだ。 誰かがすぐに頭に浮かんだ。彼が家に帰ったのか、まだスペインにいるのか、よく分かんなかったんだけど、その日の居場所を知るために電話をかけてみたんだ。
電話は鳴ったけど、出ない。 1回目が終わったすぐ後に、もう一度電話してみたんだけど、2回目も出ないみたいだったから、電話を切ろうとしたら、急に繋がったんだ。キンティンが出た。
「あ、もしもし?」 彼の声から、まだ起きたばっかりって感じだった。
「もう家にいるの?」 挨拶するのも時間の無駄だと思って、いきなり質問した。
「あ、うん、家にいるよ。昨日の夜にー」
「オッケー、よかった!」 遮って言った。「君の依頼について、いいプランがあるんだ」 部屋の椅子に座って、ワクワクしながら言ったんだ。
「プラン? どんな?」 キンティンは、俺が何を言ってるのか分からなくて、混乱してた。
「ねえ! プランだよ! 今日どこにも行く予定がないなら、どっかで会って、全部話そうよ。時間あるうちにさ」 目を回しながら言った。
「今? 今日? 明日とか明後日じゃなくて?」 彼のせいで、目が観覧車みたいになりそうだった。 質問攻め。
「そう、今! 今日も明日も違う!」 聞こえるように、わざと大きな声で言ったんだ。
「でもーなんで今? 今日、何か予定ないの? クリスマスなのにさ」 キンティンは、心の中で文句を言ってたんだと思う。
「つまり、今日会いたくないってこと? 俺のためだけに簡単にしてくれてるみたいだけど、プランを話して、日にちを決めるっていう時に、嫌だって?」 止まって続けた。「まあ、話は簡単だよ」
「おい! 待って!」 電話を切ろうとした時、向こうで叫び声が聞こえたんだ。バックで何か割れる音もした。
反響がすごくて、彼の携帯が落ちて壊れたみたいだった。
「やべ!」 彼は悪態をついた。
「今から起きて、準備するよ。どこで会う?」 反響がなくなったときに、彼は言ったんだ。
その時、笑いそうになった。 嘘をつくふりをしたときに、彼は急にパニックになったんだ。
「事務所の近くのイタリアンレストランで会おう」 ニヤニヤしながら答えた。
「分かった、行くよ」 彼は答えて、電話を切った。
ニヤニヤが和らいで、笑顔になったんだ。 俺の作戦は成功して、会うべきクライアントがいるから、逃げる正当な理由ができたんだ。
急いで準備して部屋を出たんだ。お客さんが来る前に、階段を駆け下りた。深呼吸してから、ママが食事の準備をしているキッチンに入ったんだ。
演技しなきゃ。 大事なクライアントに会うためにいでるように見えないと。
「マザーアース、大事なとこに行かないと!」 ストーブの前に立っているのを見て、大声で言った。
「フェリペ、どこに行くんだい?」 後ろから双子の弟が聞いてきた。
彼の方を向いたら、彼が俺のことを見抜いてるような目つきだった。眉毛がくっついてて、俺が何をしようとしてるか分かってるみたいで、お願いだから邪魔しないでくれって心の中で願ったんだ。
ゴクリ。「クライアントに会わないと。今日しか時間がないみたいだから、ちょっとスケジュール調整しなきゃ」 答えたんだ。
「なんで今なの? 午後に調整しなかったの? 今朝はお客さんが来るんだし、みんなで一緒にいた方がいいじゃないか」 今度はママに言った。彼女の短いカールした髪がボサボサに見えて、直してあげようと思った。
「残念ながら、無理だよ、ママ」 マダムの髪を直しながら答えたんだ。ママがため息をつくのが聞こえた。
「あんたのことだから、止められないわよね?」 ママがそう言ったから、すぐに笑顔になった。つまり、行かせてくれるってことだもん。
フェリックスが変な顔で俺を見てたから、すぐにその笑顔を消したんだ。「ありがとう、ママ」 後ろから抱きしめながら言った。