10- 嫌悪
10- 嫌悪
「初めて触られた時はあんなに綺麗だって感じたのに、今はただただ嫌悪感しかない。」
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ベッドフレームに背中を預けて、また出血し始めた足の痛みも無視して、あたしは動かなかった。
自分の裸の体にシーツを巻きつけて、すすり泣き始めた。涙が頬を伝って落ちていく。彼が服を着ていて、あたしは恐怖で震えていたから。
「泣き止ませろ。」彼は冷たく命令した。下はズボンだけで、あたしの泣き声に顔をしかめている。
「あんたのことなんか大嫌い。」あたしはそう言って、彼がエッチな目で私を食い物にする前に、自分の膝を抱きしめた。
「そうしてくれ。あたしもそうしたい。」彼はまるで感情のない返事をし、シャツを着て背を向けた。
一瞬、彼の背中を見た時、全てが止まった。体の機能も止まってしまったけれど、こんな束の間の安らぎは、ほんの一瞬しか続かなかった。彼は肩越しに振り返ったんだ。
あたしの怯えた瞳と彼のいたずらっぽい瞳が絡み合った時、あたしは彼が、既にボロボロになったあたしをさらに破壊するだろうって分かったんだ。
「気づいた? アイリーン。あの時、あたしらは結婚の儀式をした時と全く同じことをしたのに、なんだか全然違うだろ?」彼はかすれた声でそう言い始めた。
そんなこと考えたくもなかったけど、本当のことだった。どうしてこんなことになっちゃったのか、あたしには理解できなかった。彼がほんの少しだけ見せてくれた愛情のかけらは、あたしが掴む前に全部消えちゃった。
負け犬みたいに涙を流し、声は喉に詰まってしまった。彼はまるで獲物に群がる肉食獣のように、あたしの状態を見て楽しんでいる。
獲物を弄ぶハンターって感じ。
「あたしは優しかったのに…」彼は甘い言葉でそう言い、フレームに手を置いて、片方の口角を嫌らしく吊り上げた。
「見てよ、泣いて、悲しんで、落ち込んで…ちっちっち。」あたしを楽しんでいるくせに、あたしを可哀想がってるフリをして、頬を撫でてきた。
あたしを悪魔だって気付かせないくらいに、彼は完璧に愛情を表現するんだ。自分の冷酷な本性を魅力で覆い隠すのが、上手すぎるんだよ。
「何がしたいの? あたしを体の所有物だって言いたいの?」あたしは彼の手を叩きのけながら唸った。もう彼の汚い手で触られたくなかったんだ。
あたしの大胆さに、彼は睨みつけてきた。あたしはそんなことするべきじゃなかったって警告するように、骨が凍りつきそうになったけど、幸いにも彼は少しだけ優しさを見せて、許してくれた。
「違うよ。感情がすごく大事だってことを示したかったんだ。」彼はきっぱりと言い、その自信はあたしの魂を永遠に彼の暗闇に閉じ込めるように、あたしを凍りつかせた。彼の目の残酷さが、あたしを破壊したんだ。
「見てごらん。全部同じことなのに、嫌に感じるのは、お前の認識のせいだ。」彼はあたしの耳元で囁き、わざとシーツを掴んだ。そして、あたしの体を表に出すようにシーツを引っ張ったんだ。
彼の手がシーツの上からあたしの手を握り、あたしの体に触れようとした時、あたしは震えた。彼はあたしの緊張した体にニヤリとした。
「あの頃は、あたしはあんたの本当の顔を知らなかった。あんたが何者なのかも。」あたしはどもりながら、胸にシーツを強く押し当てて、なんとかそう言った。
「感情がいかに、お前の行動に対する気持ちをコントロールしているか、わかるだろ?」彼はそう言った。
幸いにも、彼はあたしの手を離してくれた。でもほんの数秒後、彼が今まであたしの魂に刻んだ傷を指でなぞるたびに、あたしの体は激しく震えた。
「あたしのはコントロールできない。全部顔に出る。だから、あたしと結婚したんでしょ? あたしの不幸を楽しみたいから…」あたしはそう言って唸り、涙で視界がぼやけた。
あたしは頭を下げようとしたけど、彼はあたしの髪を掴んで、無理やりあたしに彼の目をじっと見させた。「その通りだ。どうやって自分を止めろっていうんだ?」彼は唸り、荒い息を吐きながら唇を開いた。
あたしの体も、セックスも、彼を魅了しない。彼を魅了するのはあたしの恐怖なんだ。
「あんたみたいな人がいるなんて信じられない。どうしてそんなに残酷になれるの?」あたしは悲しそうにそう尋ねた。もうどれだけの失望と心の痛みがあったか、表現することすらできないんだ。
「誰でも歪んだ考えを持っている。でも、あたしはそれを現実にしただけ。お前はそれを心の中にしまっておくだけ。」彼は自分の獣のような行動を、そんな風に説明した。
マジでサイコパスじゃん。
「罪は、犯さない限り罪じゃない。人を殺さなければ、殺人犯じゃない。あんたがそう選んだんだ。悪魔になりたかったんでしょ。」あたしは彼の言葉を訂正した。少なくとも、彼は理解したみたい。
「あたしは、誰かを傷つけようなんて考えたことすらないよ。ましてや、あんたを苦しめるなんて。」あたしはそう言って、真実を伝えた。あたしは彼以外の誰のことも憎んだことなんてないんだ。
あたしの無垢さと悲しみの言葉に気づくと、彼は意地悪く笑い、手を放して、優位な姿勢で直立した。
「アイリーン、アイリーン、アイリーン。」彼は、あたしの繊細な感情が彼の危険な世界には存在しないかのように、嘲笑するように笑った。
「お前と、お前の優しさは、いつもあたしを魅了する。で、今度はなんだ?」彼の笑いはゆっくりと消え、代わりに恐ろしい表情に変わった。彼はポケットに手を入れ、一歩近づいてきた。
「お前は、自分が寛容だったことを後悔することになる。」彼がそう言い切った時、あたしの心臓は異常にドキドキした。歯を食いしばって、涙を拭った。
「後悔しない。あたしが何者で、何が大切かってことの方が、あんたよりずっと良い。」あたしはそう呟き、頬の内側を噛んだ。目を閉じて自分をコントロールしようとしたけど、結局は、彼が一番好きなあたしの姿を隠すことはできなかった。
「見てればわかるさ。」彼もきっと、ニヤリとしているに違いない。
彼は咳払いをして、あたしのシーツを掴んだ。あたしはそれを見て、息を呑んだ。「とにかく、こっちに来い。お前を綺麗にしてやる。」彼は命令し、従順を求めた。
彼を怒らせたくなかったあたしは、彼があたしをベッドから持ち上げて、お風呂に入れてくれるために連れて行く間、ずっと震えていた。あたしは石像のように、ずっと黙っていた。
彼があたしを洗うのを手伝ってくれた時の彼の行動は、優しさとは言えなかった。優しいふりをしているかもしれないけど、彼の無表情な顔と、荒々しい体の扱い方は、あたしを傷つけた。彼の冷たい手は、思いやりも愛情も全く感じさせなかったんだ。
「わかったわ。もう、彼の愛情を感じることは二度とないだろうって。」
望まない涙が頬を伝い、彼の指があたしの背中を這う感覚に、あたしは打ちのめされた。彼の指があたしの胸に触れた時も、ボタンを留めながらあたしの目をじっと見つめていた時も。
「なんで泣いてるんだ?」彼はそう尋ね、自分の胸にあたしを押し当て、濡れた髪を手に取り、それを撫でてあたしの耳の後ろにかけた。
彼の優しい行動は、あたしをさらに傷つけた。またしても涙がこぼれ落ちた。そしてバカなことに、ほんの一瞬だけ、あたしは彼の荒廃した心の中に、あたしへの感情が少しでもあるのかと思ったんだ。
「ん?」彼はうなり、あたしの腰を抱いて、怪我した足で立つのを手伝った。そして、目を合わせながら、あたしに覆い被さるように、あたしの上に彼の熱い体を押し付けてきた。
鼻をすすりながら、あたしは彼のシャツをしっかりと掴み、弱々しく囁いた。「あたしを壊したのはあんたよ、セバスチャン。」あたしは告白し、自分の掌をもっと強く押し当てた。
「あたしを信じて、あんたに全てを捧げたのに、あんたはそれを一瞬で壊した。」あたしは言葉を続け、それを聞いて、彼が少しでも慈悲を感じてくれることを祈った。
彼の笑顔が消えた。あたしの言葉が少しは効いたのかもしれない。
「あたしを壊した…」あたしは繰り返した。彼の意地悪な表情は消え、あたしの理解を超えた、説明できない表情に変わった。それが同情なのか、あたしにはわからなかった。
「セバス…」
あたしは下を向こうとしたけど、彼はあたしの顎を掴んで、無理やりあたしに彼の目を深く見させた。あたしは絶望して視線を落とした。彼はあたしの唇に近づいてきたんだ。
「アイリーン。」彼は息を切らしてあたしの名前を呼んだ。
あたしの心臓は期待でドキドキし、彼が何をするのか想像もつかなかったけど、その緊迫感にゾッとした。重苦しい沈黙の中であたしの体を観察した後、彼は深呼吸したんだ。
「お前は、あたしに心臓があることを願っているんだな。」
彼の返事に、あたしの頭は真っ白になった。何もかも忘れて、彼の握りが強くなった時、あたしの体は反応することすらできなかった。
彼はまさに悪魔そのものなんだ。
彼は暗い笑い声を上げ、乱暴にあたしの下唇を噛み、あたしの唇にキスをした。息を切らし、魅了された、冷酷な目が、あたしを覗き込んでいる。
彼はもう、引き返せない道を歩んでいるんだ。彼は鉄の塊だ。
「ああ、少しの涙で、あたしが溶けると思ったのか?」彼はニヤリと笑い、あたしをベッドに押し戻し、ポケットに手を入れ、あたしの恐怖に満ちた体に覆い被さった。
「数えきれないほどの人間があたしに慈悲を乞い、お前は涙を流せば、あたしに少しは効果があると思ったのか?」彼はあたしの感情をバカにするように笑った。
あたしは彼を操ろうとも、彼の優しさを探そうともしなかった。あたしはただ、自分の感情、自分の痛みを表現しただけなのに、彼はそれを嘲笑したんだ。
絶望して目を閉じ、シーツを強く握りしめ、頬を噛んで、最初から気にしなかった人に傷つけられないようにした。
ゴクリと唾を飲み込み、彼を睨みつけ、心の底から彼を憎み、最後の1滴まで憎み、息を失いながら唸った。
「あんたはモンスターよ、セバスチャン・ステリオス。」
でも彼はそれが誇らしいことのようにニヤリとした。この不快な称号を誇りに思っているかのようだ。
そして、悪意に満ちたきらめきを見せながら、彼は一瞬あたしを見てからベッドに行き、あたしをこの嫌悪感に満ちた夜に置き去りにした。そして、あたしは彼に連れてこられた運命に泣きながら、夜を明かすんだ。