15- 恐怖を糧に
あの時、あたしはマジで弱ってて、助けてくれる手をただ祈ってたんだよね。 頼れるのは、その手だけだったんだよ。」
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次の日、あたしはわざと寝坊したんだ。セバスチャンがいなくなってから起きて、その日はずーっと穏やかに過ごせるようにって。
でも、彼を避けるのって、いつまでできるんだろう?永遠には無理だし。 あたしの態度で、彼の我慢の限界を試してるだけだし、それが切れちゃったら、来るべき恐怖に備えないと。
で、切れちゃった。あたしの無視するフリにも飽きたみたいで、早く帰ってきちゃったんだよね。 あたしはスマホでゲームしてた。それしかできないから。
誰かに電話するのも、録音されちゃうから無理だし、消せないし。 ゲームするか、YouTube見るか。あたしのスマホの機能は全部制限されてて、それしかできなかったんだよね。
足音が近づいてくるのが聞こえたから、すぐ顔を上げた。そしたら、目の前にセバスチャンが立ってたんだ。
白いシャツを着てて、上2つのボタンが開いてて、袖は肘まで綺麗にまくってあって、髪は完璧にセットされてて、あたしをじっと見つめる目が、なんか読み取れない。
「セバスチャン?早くない?」 どもりながら、あたしは立ち上がって、髪を耳にかけながら、後ろに下がった。 このヤバい存在から、ある程度の距離を保たないと。
ポケットに手を入れて、彼はニヤリと笑った。あたしに近づいてくるにつれて、ドキドキが止まらない。 彼の視線が、あたしにロックオンされてるから。
「みんなに期待して、結局、寂しい思いをするのは、家じゃないか?」
あたしの何気ない言葉を真似して、バカにしてきたから、心臓が止まりそうになった。
「そう聞こえるようにしたんだよ。」 弱々しく返事をして、彼の優位な姿を見上げて、マジで、真剣に受け止めないでほしいって祈った。じゃないと、あたし、死ぬことになる。
あたしの反応を見て笑って、彼はあたしの頬を指で撫でた。 優しさのかけらもない。「ほら、お前が文句言ってた、注目だよ。」
「あたしは…口を抑えなきゃいけなかったんだ。」 ぶつぶつ言いながら、あたしは視線をそらして、彼のタッチに耐えた。
「演技の仕方を学べって言っただろ?」 彼はそう言って、あたしとの距離を縮めた。あたしは身動き取れなくなって、ドキドキが止まらない。
「無理だし、できるなら、こんなところにいないよ。 あなたはそうしてほしくないんでしょ。」 つぶやいて、あたしは顔を背けたけど、彼の優しいタッチは、荒々しい掴み方に変わり、あたしは彼の鋭い銀色の瞳をもう一度見つめさせられた。
「だから、あたしにこんな恐怖を与え続けるのか、ね? あたしの果てしない不幸への渇望を満たすために。」 彼はそう言って、あたしの心臓をドキドキさせた。
これは、あたしがやっちゃいけないことで、いつも彼に魅力を与えて、彼があたしを欲するようにしちゃうんだよね。
「どうすれば…やめられるの?」 あたしは絶望した顔でそう尋ねた。
「やめないで。そうしたら、面白くなくなるだろ…」 彼が近づいてきて、あたしの唇に親指を押し当てて、あたしの腰を抱き寄せて、体を重ねてきた。
「他の人の前では、コントロールしろ。人前では演技しろ。 自分の言葉をちゃんと選べ。じゃないと、あたしの純粋な血筋に血を流すことになる。」 彼は低く、かすれた声で囁き、あたしは硬直した。
「なんで、家族を巻き込むの? あたしは何もしてないし、静かに従ってるし、抵抗もしてない。セバスチャン、これ以上、何が欲しいの?」 彼の要求に、声が震えながら、あたしは彼のシャツを掴んだ。でも、いつからあたしの不幸が彼の心を溶かすようになったんだろう? まったく、そんなことない。
「アイリーン、アイリーン、あたしはこんな恐怖を引き出すのが好きなんだ。 お前をもっともっと味わいたい。それに…」 彼は誘うように笑いを抑え、頭を振って、指をあたしの胸に滑らせ、乾いた唇から目を離さない。
彼の口調は突然、支配的になり、あたしのシャツを掴んで、引っ張ってきて、あたしは息を呑んだ。「あたしが帰ってくる前に寝て、あたしをずっと避けられると思ってるのか?」
殺意のまなざしは、あたしの喉を渇かせ、これ以上言葉が出なくなった。「マジで?」
あたしの目に涙が溜まって、彼の言葉の強さに震えた。「セバスチャン…」 うめき声を上げながら、言い訳をしようとしたけど、彼はそれを遮った。
「違う、そうなんだ。可愛いな。あたしの甘い獲物は、一時的に逃げようとした。キュート。でも…」 彼の「でも」を聞いて、あたしは魂が抜けそうだった。 彼の返事を予想して、あたしは鼻をすすった。
「意味あったか!?」 彼は叫んで、あたしは息を呑んだ。 怖かった、なんて言葉じゃ足りない。 彼の声が荒々しくなると、あたしの体は硬直して、泣き出してしまった。
「意味あったか!?」 シャツを片手に、もう片方の手であたしの髪を握り、あたしはもう彼の支配に耐えられなかった。 彼の力によって、あたしの魂は粉々になった。
「いや…」 すすり泣きながら、あたしは彼の前で言葉を発せなかった。
「もっと大きく。」 彼は命令した。
「嫌!」 あたしは叫び、目を閉じた。 彼の焦りの眼差しと、あたしが彼を避けようとした無駄な努力が、重なるのには耐えられなかった。
「二度と、あたしを避けようとするな。 分かったな?」 彼は震えながら警告した。あたしはただ頷くことしかできなかった。「はい…」
鼻で笑って、彼はあたしを突き飛ばして、シャワーを浴びに行った。 弱った体を無理やりベッドまで動かして、あたしはすぐに座った。 震えを止めて、高鳴る心臓を落ち着かせるために、深呼吸をした。
でも、無駄だった。 彼はいつも、あたしの魂を恐怖に陥れるんだから。 どんなに露骨な獣なんだろう? 涙を拭いながら、あたしの目は地面から離れなかった。
でも、あたしが抑えようとした恐怖は、シャワーを浴びて出てきた彼が、ズボンしか着ていない姿を見た時に、強く襲ってきた。濡れた髪に手をかけている。
彼の目にある飢えに気づいた時、あたしの心臓はドキドキした。シーツを掴み、気づいてないふりをしたけど、顔が赤くなってバレた。
赤くなったあたしを見てニヤリと笑って、彼は近づいてきて、ベッドの縁に手をかけた。 彼の筋肉がさらに見えるようになって、あたしはゴクリと唾を飲み込み、後ろに下がろうとした。彼が這い上がってくることを許してしまった。
彼は悪辣に笑い、あたしはもう彼に距離を保つように頼む力もなかった。 あたしの小さい体をじっと見つめて、それを貪ろうとしている。
残りのわずかな力を振り絞って、あたしは彼の名前をうめき、泣きそうになりながら言った。「セバスチャン、お願い…」
彼の笑みはさらに大きくなり、彼は手を伸ばして、あたしの手首を掴み、彼の心臓の上に置いた。心臓は激しく鼓動していた。
「お前のたった一言のうめき声で、あたしの心臓がどうなるか感じてみろよ? お前があたしが欲しいものをくれるんだから、抵抗できるわけがないだろ。お前自身が、あたしを誘惑してるんだ。」 彼は唸り、手首を強く握った。
悲鳴を上げ、あたしはもう逃げ場がないことに気づいた。 彼はあたしの指を自分の指と絡ませ、頭の横で固定した。
「なんで、こんなことするの?」 あたしは嗚咽し、どれだけ辛いか表現できなかった。 何を言っても、自分の気持ちをコントロールできなくて、辛いんだ。
心が壊れる。
「お前が、あたしの罪の燃料だから、どうしたら手放せるんだ?」 彼は息を切らしながらそう言って、あたしの体を彼と重ね、あたしの片手を解放して、涙を拭った。
「自分の奥さんを壊すのは、痛くないの?」 あたしはそう言ってしまった。言うべきじゃなかったけど。
「獲物として見てるから、それが魅力的になるんだ。」 彼は冷たく答えた。 嫌悪感を感じて、あたしは彼の手を叩き落とした。
「あんたはサイコパスよ。精神病院に入るべきよ。」 怒鳴りながら、あたしは彼の冷たい反応に疲れ果て、壊れていった。
「いや、あたしは闇に属してるんだ。」 彼は訂正し、あたしが彼の手を叩き落とした時、かすかに笑った。
「そして、お前はあたしといるんだ…」 彼はそう言って、あたしの心臓は胸から飛び出しそうになるくらい激しく鼓動した。
「獲物を連れていくことはないわ。」 あたしはそう言って、反発して顔を背けたけど、あたしの返事は、彼の顔に予期せぬ真剣さをもたらした。
「あたしがすることを見て、お前はあたしを奥さんとして認めるだろう…」 彼はそう言って、あたしを少しの間置いていった。 あたしは瞬きし、混乱した。彼の欲望は消え、理解を超えた何か恐ろしいものに変わっていた。
「あたしがすることを聞いて…」 唸りながら、彼はあたしの横に手を叩きつけ、あたしは飛び上がった。でも、あたしは本当に彼を刺激するようなことを言ったんだ。
「あたしがすることに触れることができる時…」
彼が何を言ってるのか、全く分からなかった。でも、セラピーで彼を癒せないなら、あたしに何ができるんだろう?
「それまで」 あたしの頬を包み込み、彼はあたしの唇を自分の唇で撫で、激しく唸り、あたしの唇を奪った。「アイリーン・ステリオス、あたしの近くで燃えてろ。」