7- 彼の獲物
「あたしはここに捕まってるの。彼は絶対あたしを逃がさない」
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足がズキズキ痛んで、ゆっくりと目が覚めた。この光景が、ただのひどい悪夢で、まだあたしが想像してたみたいに美しい世界であってくれって、心から願った。
でも、足の痛みは、もう自分の理想郷じゃないってことを嫌でも分からせる。あたしが目撃したものが、どれだけ恐ろしいものだったかって考えたら、胸が締め付けられた。
愛情を注いでくれる、優しい男だと思ってたのに、まさか、とんでもない犯罪者の一人だったなんて。
「なんで、よりによってあたしの**セバスチャン・ステリオス**なのよ?」
目尻に涙を浮かべながら、あたしの心は重く沈んだ。
周りを見渡すと、**セバスチャン・ステリオス**が目の前にいた。お茶をすすりながら、威圧するように足を組んで、携帯に見入っている。
嫌々ながら、あたしは息を呑んで、少しだけ体を起こすと、彼がそれに気づいた。ゆっくりと、でも冷たい視線をあたしに向けた。
彼の獲物を探るような視線に、喉が締め付けられ、心臓がバクバクする。
「やっと起きたか、ん?」
彼の低い声は、あたしが今まで知らなかったような力強さで、耳に突き刺さった。
あたしの怯えた様子が面白かったのか、彼はカップと携帯を置いて、席を立った。それを見ただけで、背筋がゾッとした。
「や、やめて…」
あたしは震えながら、涙を浮かべ、這って逃げようとしたけど、後ろにはベッドフレームしかない。逃げ場なんてなかった。
「何を?」
彼は片腕をあたしの前に置いて、楽しそうに眉をひそめた。
「触んないでってこと?」
色っぽく問いかけながら、指で頬をなぞる。彼の些細な触れ方にゾクゾクして、肌が焼けるように熱くなるのが分かった。
「それとも…怖がらせないでってこと?」
彼は、あたしが恐怖に震えるのが嬉しそうに、指を下にずらした。
今まで、人生で一度も悪いことなんてしたことなかったのに、この状況はあまりにも酷すぎた。
「なにもしないで」
あたしは震える声で、涙で視界をぼやけさせながら、片膝を立てて胸に抱きしめた。
もう片方の足も痛む。彼があたしを撃とうとしたなんて信じられないけど、もし殺すつもりなら、あたしはここにいないはずだ。彼はあたしの恐怖をさらに引き出したいんだ。
「それはちょっと違うな」
彼は顔をしかめて、あたしの隣に座った。あたしは息を呑んだ。
彼の底の見えない目は、あたしの体を上から下まで見つめ、完璧な仮面を作るために、真っ暗な雲が渦巻いている。
「お願い、行かせて、**セバスチャン・ステリオス**」
あたしは懇願し、彼の存在に落ち着かなくて、自分の肌を爪で引っ掻いた。
「それもな」
あたしの役に立たないお願いに、彼はがっかりしたようにため息をついた。
「なんでこんなことするの?あたし、あなたに何したの?」
あたしは声が震えた。彼の絶え間ない力に押しつぶされることに、もう耐えられなかったんだ。
「何にも」
彼は無愛想に答えた。
人差し指を、あたしの手から肩へと動かす。彼が何でもできること、あたしがそれに逆らえないことを見せつけるように。
「じゃあ、なんであたしと結婚したの?」
あたしは泣きそうになって尋ねた。
「ダーリン、恨みとか、そういうんじゃないんだ」
彼は誘うように話し始め、あたしの顎を指で持ち上げた。
「じゃあ、なんなの?」
彼の威圧的な視線と向き合わされ、心臓がドキドキして、彼が私たち二人の本当の関係を告げた時、体が動けなくなった。
「あたしの、一番深い願望だ」
抑えきれない笑い声とともに、彼はあたしの耳元に寄り添い、自分の最も深い願望が実際には何であるかを囁いた。
「不幸」
恐怖が最高潮に達した時、あたしは、人の見せかけを信じてはいけないと悟ったんだ。
仮面は、非常に操作的で危険なんだって。
「いや…」
涙が頬を伝い落ち、あたしは拒否したけど、彼はあたしの顎を持ち続けていた。
「嫌だ」
あたしは繰り返した。でも、彼はあたしの涙にキスをして、嬉しそうに笑った。
「そうだ」
彼は頷いた。
「なんであたしなの?数いる中で、あたし?」
あたしは、喉につまった嗚咽を抑えようとしたけど、夢が目の前で崩れていく時、姿勢を保つのは難しい。
「なんで君かって?ふむ、答えは分かってるだろう」
彼は囁き、あたしの唇を親指でなぞり、肌を粟立たせ、鳥肌が立った。
「君は一番手軽な獲物だった。王子様との結婚というファンタジーの中に生きてたやつ。あたしはそれを演じるだけでよかった。それで、ゲットだ」
彼の不気味な笑い声が、あたしが置かれている悲惨な状況を思い出させ、彼がすべてを支配していることを示した。
「これはひどい嘘に違いない…」
あたしは心の中で打ち砕かれたように呟いた。
「君が経験したのは嘘だった。これは現実だ」
彼は訂正したけど、それがあたしの心を粉々に砕いた。
「あたしが結婚するはずだった人を信じたのが全部悪いってこと?あたしがすべてを捧げたのが?」
あたしは打ちひしがれて尋ねた。この世界が、あたしの想像よりずっと悪いなんて信じられなかったんだ。
「その通り。君は希望、夢、愛を持っていた。あたしはそれを我慢できなかった。あたしは、それを自分の足元で粉々にしたいと思ったんだ」
彼は唸り、あたしの恐怖が止まらなくなるように、あたしの上に覆いかぶさった。
彼の下に閉じ込められ、間違った男、忌々しい冷酷な殺人犯と結婚したあたしの将来を反映していた。
「君に最高の幸せを与え、最後にはそれを奪ってやりたかったんだ」
彼はあたしの顔に近づけ、心臓が数えきれないほどドキドキしながら言い始めた。
「どうして…?」
あたしは信じられないと尋ねた。夫からこんな言葉を聞くとは思ってもみなかった。
「君を夢の淵に追いやり、そこからこの悪夢に引きずり込みたかったんだ」
彼は首に話を続け、熱い息があたしの首にまとわりつき、恐怖で気が狂いそうになったのを見ていた。
「壊してやる」
彼は唸り、あたしの耳たぶを噛み、あたしの腰を引っ張り、ベッドの下に素早く押し込んだ。
彼の目が胸に注がれ、あたしが激しく呼吸しているのを見て、暗い意図の厚い雲が彼を飲み込んだ。
「やめて…」
彼の言葉に、ただただ怯えていた。