第十七章 - 止まれ - ダミアン・ブラックウッドの視点
僕、書斎に立って、サイモンが渡してくれた報告書をじーっと見てるんだ。ローグどもがまた俺たちの縄張りを試してる。どんどん大胆になってきて、連携も取れてるし。まだ朝早いっていうのに。マヤがいるって気づいたか、少なくとも疑ってるんだよ。屋敷の周りはピリピリした空気が漂ってて、俺のパックも落ち着かない。
ローグだけじゃないんだよな。ハンターも動き始めてるし。何か噂を聞きつけたみたいで、すぐそこに匂いを辿ってきそうだ。
そして、マヤのこと。
息を大きく吐き出して、また書類を置く。昨日の夜は少しだけ眠ったんだけど、彼女のことが悪夢みたいに頭から離れないんだ。それに、彼女のことばっかり考えてしまうのも困る。
彼女は、俺が予想してなかった厄介な存在なんだ。こんなふうに。彼女は鍵になるはずで、運命で結ばれてるはずなのに、そうじゃなくて、俺が築き上げたものをぶち壊そうとする嵐みたいなんだ。
それとも、俺が嵐で、彼女は俺がたどり着けない静けさなのかもしれない。前にも言ったけど、彼女は嵐の目に吸い込まれていくんだ。
ノックの音で、考えが中断された。サイモンが入ってきて、険しい顔をしてる。
「また移動しました」と、彼は前置きなしに言った。
俺は顎をぎゅっと締めた。「どこに?」
「東棟です」とサイモンは答えた。「古い部屋の近く。あんまり食べてないみたいで、すぐに出てった。図書館に向かったんじゃないでしょうか」
その言葉で、俺はぞっとした。この家の中で、彼女が一番近づいちゃいけない場所だ。
「いや」と俺はつぶやき、もう動き出してる。
俺が彼の横を通り過ぎると、サイモンは道を開けた。足取りは速く、目的ははっきりしてる。東棟は、彼女がいていい場所じゃないんだ。特に一人では。そこに隠された秘密は多すぎるし、変身するのが苦手なパックのメンバーもそこにいるんだ。
そして、彼女の匂いはそこに向かってる。図書館には行かなかったんだ。通り過ぎたんだから。
部屋に通じる廊下にたどり着いて、立ち止まる。すぐに感覚が研ぎ澄まされる。空気は冷たくて、静寂は、何か根源的なものの気配で重い。
二重扉を押して中に入ると、すぐに彼女の姿が目に飛び込んできた。
マヤは部屋の中心で固まっていて、テーブルの上の本のどれかに手をかけていた。彼女の大きな目は部屋の奥に固定されていて、そこにオオカミがいて、その輝く琥珀色の目が彼女をじっと見つめていた。
胸が締め付けられる。
オオカミは動かず、彼女も動かない。まるで、目に見えないにらみ合いの中にいるみたいで、言葉にしない理解が二人の間に流れている。
「もうたくさんだ」と俺は鋭く言って、その緊張を断ち切った。
オオカミは俺の方に頭を向け、体が緊張し、喉から低い唸り声が聞こえた。
「落ち着け」と俺は命じ、近づいた。
唸り声は消えたけど、オオカミは退かない。そこに留まって、彼女の方を一瞥してから、影の中に隠れて見えなくなった。
マヤは俺の方に顔を向けて、恐怖と反抗心が混ざった目で輝いている。
「あれは何?」と彼女は震える声で強く尋ねた。「どうして自分の屋敷にオオカミがいるのか説明してくれる?」
俺は彼女の質問を無視して、代わりにテーブルと、そこに散らばってる開いた本に目を向けた。「ここにいるべきじゃない」と俺は冷たく言い、本の1冊をパチンと閉じた。
「いつもそう言ってるけど」と彼女は腕を組んで言い返した。「でも、何が起きてるのか説明してくれたら、自分が知るべきじゃないことにうっかり足を踏み入れることもなくなるんじゃない?」
彼女の言葉は神経に触ったけど、顔には出さないでおいた。
「自分が何に手を出してるのか、分かってないんだ」と俺は鋭く言った。「これは、自分が思ってるよりずっと大きなことなんだ」
「それなら、説明して!」と彼女は声を荒げた。「だって、もう暗闇の中に放置されるのは嫌なんだから」
彼女の反抗は強く燃えてて、一瞬、降参しそうになった。だけど、真実は危険すぎるし、重すぎる。
「俺を信じろ」と俺は代わりに言い、声は少し優しくなった。「準備ができたら、話すよ」
彼女は苦笑した。「信じる?本気?」
俺は顎を食いしばって、彼女の怒りの重さが、予想以上に響いた。「マヤ、俺は守ろうとしてるんだ。それを信じるかどうかは別として」
彼女は首を振って、一歩後ずさった。「あんたの保護はいらないかもしれない、ダミアン。ただ真実が知りたいだけかもしれない」
部屋は静まり返り、彼女の言葉が重く二人の間に漂う。俺は彼女を注意深く見て、彼女の目に燃える火が、彼女がここにいる理由を、彼女が重要である理由を思い出させてくれる。
そして、彼女を手放すわけにはいかない理由を。
殺されるわけにもいかないんだ。
彼女の言葉は拳みたいに響いた。「ただ真実が知りたいだけかもしれない」
彼女が何が起きてるのか、何が起こってるのか理解するために知っておく必要のあるすべてを話したい。すべてを理解するために、彼女がこのすべてでどんな役割を果たしているのかも。でも、真実は危険だし、彼女に話すぎると、コントロールを失ってしまうんだ。
守ろうとしてるんだって、自分に言い聞かせる。だけど、彼女の反抗の前では、その言葉は空虚に聞こえるんだ。
彼女は、俺が何か言うのを待ってる。何か、このすべてを説明できるようなこと、俺が彼女を巻き込んだぐちゃぐちゃを理解できるように。だけど、どうすれば?どうすれば、彼女が何世紀も俺の家族を悩ませてきた呪い、予言と結びついていることを、彼女を怖がらせずに話せるんだ?
俺は一歩前に出て、右手をテーブルの端に置いて、適切な言葉を探す。
「自分は、自分が思ってるよりずっと大きなものの一部なんだ」と、俺はざらついた声で始めた。「自分が理解できる準備ができてないもの。だから、押し進めることはできないし、物事がそうなってるんだ」
彼女は眉をひそめた。「それで?それだけ?もっと大きなもの、ってことだけ?」
俺は大きく息を吐き出し、胸に不満がこみ上げてくる。「そんなに単純じゃないんだ」
マヤはあきらめない。彼女はそこに立って、腕を組んで、俺が答えられない疑問を両目に浮かべている。「じゃあ、教えて。もうこんなことできない。みんなに、この何かで役割を演じることを期待されて、自分はどこに引っ張られてるのか、知る必要があるの、ダミアン」