第68章 - 彼女が鍵 - ダミアンの視点
俺がマヤとどうしてるか、群れのやつらの思考が押し寄せてくる。あいつらは、マヤが予言の答えになる可能性があるって知ってたんだ。つまり、俺のツガイになるってことだ。でも、俺があいつにキスしたのを見て、確信を深めたみたいだな。
あいつがキーなんだ。
その考えが頭の中でこだまする。マヤの頭越しにやつらを見たとき、もう隠し通せないって思った。認めざるを得ない。
「見てるわね」って、マヤがささやく。
やつらがじろじろ見てるのが嫌みたいで、マヤはナーバスになってる。少し震えてて、指で俺のシャツをいじって、視線をそらして下唇を噛んでる。
「中に入ろう。今日はもう訓練は十分だと思うよ」
マヤはうなずくだけで、俺を見上げて、まだ下唇を噛んだまま。「うん」
俺たちの腕はゆっくりと離れて、一緒に中へ歩き出す。みんなの視線が俺たちに注がれて、待ってる。きっと、ここで全部説明してくれるって期待してたんだろうけど、そんなことするつもりはない。
後で、マヤを寝かしつけてから話し合うって、命令した。あいつらのために、マヤを不安にさせるようなことしたくないんだ。
マヤはすっごく大事なんだ。そして、俺のものだ。
それだけじゃない。あいつは逃げ出す可能性があるんだ。ここまで連れてくるのも大変だったのに、あいつらの前で何か言ったら、また逃げ出しちゃうかもしれない。それは嫌だ。
ドアまで来て、マヤのために開けて、先に通した。マヤは中に入って、俺を待たない。あいつの歩き方からして、もうさっきのこと後悔してるんだろうな。
「大丈夫?」って、俺は声をかけた。
「ええ、大丈夫」って、マヤは淡々と答えた。
「大丈夫には聞こえないけど」って、俺はつぶやいた。
「だって、大丈夫だもん」って、マヤはまた言った。
視線は一度も合わないまま、長い廊下を見つめてる。寝室に行くために、どっちに曲がればいいのかも分かってないみたいで、屋敷の奥の方を見てる。
「道案内しようか?」
マヤは何も言わない。
「マヤ、一体どうしたんだ?」
それでやっと立ち止まった。「どうしたって?頭の中で色んなことがぐるぐるしてて、どう考えればいいのか分からない。あなたがキスしてくれるのは好きだし、一緒に寝るのも好き。でも、あなたは私を父から買った人。私はあなたの捕虜で、この世界のことなんて全然知らない。あなたと一緒にいるのは安全だって感じちゃいけないし、近くにいたいなんて思っちゃいけないのに、ここにいる。どれだけ混乱してるか分かる?」
涙をためて、やっと俺の目を見た。色んな生々しい感情が渦巻いてて、俺も涙が出そうになった。
「そんなにややこしくしなくてもいいんだ。確かに、俺は君を買ったけど、だからって捕虜ってわけじゃない」
マヤは目を回した。「ほんとに?あなたの言うこと全部聞かないといけないんでしょ」
「狼の巣窟に住んでるからだ」って、俺はつぶやいた。「君の安全のためなんだ」
「そうだけど、あなたがいない間に、外から人が入ってきたじゃない」って、マヤは付け加えた。「安全じゃないってこと」
確かにその通りだけど、認めたくない。やつらは中に入ってきたんだ。それが俺を悩ませてる。どうやってあの警備をかいくぐって、マヤの部屋まで辿り着いたのか、わからない。マヤの部屋は俺の隣なのに。
近すぎるんだよ。
中で俺に敵対してるやつがいる。一体誰だ?
「何とかする」って、俺は低い声で言った。「やつらがどうやってセキュリティを突破したのか、調査してる」
「それはいいけど、それでも私はこの壁の中で安全とは言えないわ。だから、訓練したいって言ったの。あなたはいつも一緒にいられないでしょ。一緒にいるって言ったのに、どにも行かないで私と一緒にいるって言ったのに」
それも、もっともだ。危険な場所には連れて行けない。つまり、俺なしでここに残さなきゃいけないってことだ。それは辛いけど。
「分かってる」
「そして、みんなが色々疑問に思ってるわね」って、マヤはささやいて、俺たちが来た方を見た。
俺も視線を追って、しかめた。「群れのやつらのことか?まあ、そうだな」
「何か言ってた?何も聞いてないけど」
俺はニヤリと笑って、肩をすくめた。「狼ってそういうもんだから」
それに対してマヤはうなずいて、また目を回した。「知らないことが多すぎて、気が狂いそう。あなたは私をあなたの世界に入れたいけど、どうしたらいいの?」
俺は唇をしかめて、予言についてどこまで話せるか考えてた。今は話す時じゃない。二人とも不安で、全てがめちゃくちゃに感じる。
「そのうち分かるようになるよ。訓練しながら、もっと話せるかもしれない」
それは今のところ満足してくれたみたいで、肩の力が抜けた。「分かったわ。訓練する度に何か教えてくれるってことね。もっと知りたいわ。私がこの世界で生きていくなら、何か指針がほしい」
「分かった」って、俺はうなずいた。
そう言って、俺は手を伸ばして、マヤの手を握った。マヤはそれに視線を固定して見つめてる。
「本当にみんなの前でこんなことしていいの?」
俺は笑った。「もう何を思われるか心配する段階じゃないだろ。さっきあいつらは見たんだから。俺たちの唇がくっついてたのを」
マヤの頬が真っ赤になった。「あ、そうね」
また歩き出した時、サイモンが廊下のドアから入ってきた。汗だくで額を拭いてるけど、俺たちの手が繋がってるのを見て、立ち止まった。
何か、説明できない感情がサイモンの顔に浮かんだ。俺たちが一緒にいるのが嫌だって感じだけど、なんでだか分からない。
みんな喜ぶべきなんだよ。マヤがキーなんだから、俺たちは救われるんだ。
でも、なんでサイモンに何かあるような気がするんだ?
サイモンは首を振って、また俺たちに向かって歩き出し、最初の表情を笑顔に変えた。「外で話が盛り上がってるぞ。会議がしたいって言うだろうな」って、サイモンは声をかけた。
「分かってる。でも、それは後で」って、俺はサイモンを見つめて言った。
サイモンは俺が言いたいことを理解したみたいで、うなずいて、俺たちに追いついた。