第百十五章 - 死なない - マヤの視点
目を開けると、また天井。なんでこんな風に起きちゃうんだろ?
ため息をつきながら、また体を起こして、胸に布団を抱きしめる。右を見ると、ダミアンが隣で気持ちよさそうに寝てる。部屋は暗くて、壁のどっかに付いてる豆電球みたいなやつが光ってるだけ。
「びっくりした」って、ダミアンが囁くから、あたしはビクッとした。
「起きてるの知らなかった」って言って、胸に手を当てる。「な、何があったの?」
「3日間も寝てたんだ」って、ダミアンは声のトーンを落として言う。「近くの群れが襲われて、ほぼ全滅。まあ、寝返りを打ったやつとか、こっちに逃げてきたやつは別だけど。昨日着いたんだ」
「マジで来るんだ」って、あたしはひどい気分で呟く。
「最後だ」って、ダミアンは念を押す。「これが最後。お前が刻印されてて、俺のものだって分かれば、彼らの考えも変わるかもしれない。お前は一晩だけ落ち着いて、俺たちは最後の大仕事をしなきゃいけない。でもそのためには、お前の力が目覚めなきゃ」
そしたら急に、全部の記憶がフラッシュバックしてきて、あたしはヴィジョンを見てたって気づいた。全部はっきり見えた。あたしはそこに立って、ダミアンの手を握ってたけど、そのダミアンはあのダミアンじゃなかった。
そしてあたしは、絶対オオカミじゃなかった。あたしたちは一緒にすごく幸せだったのに、ダミアンの兄が、あたしたちの間に感情的に入ってきたんだ。
あいつはあたしを自分のものにしたがって、そしてダミアンを殺した。あたしは怒りで呪いをかけて、あたしたちをこの残酷なサイクルに閉じ込めてしまった。そして500年前に、あたしたちは再び目覚めた。ぼやけてるけど、ダミアンはまた死んだって知ってる。ローカンはいつも勝ってたけど、今はあいつが地面に埋まってて、ダミアンが生きてる。
「思い出した。ダミアンは?」
ダミアンは首を振る。「いや、覚えてない。もしかしたら、番いを終える前に思い出すことになってるのかもしれない。もしかしたら、お前の力が完全に発揮されない理由の一つがそこにあるのかも」
あたしはゴクンと唾を飲み込んで、布団から手を離して、自分の手を見た。魔法の触手が絡み合ってる。キラキラ光ってて、こんなのありえないと思ってた。
「群れと話しに行かないと。また食堂に集まってるみたいだ」って、ダミアンは急に布団を蹴り上げて、ベッドから降りた。
「え? 今? まだ夜中だよ」
ダミアンは肩をすくめて、Tシャツを頭からかぶり始める。「分かってるけど、何か別の報告が入ったみたいだ。今すぐ行かないと」
ダミアンが立って振り返った時、あたしは彼の顔をちゃんと見た。目の下にクマがあって、薄暗い中で目立ってる。すっごく疲れてるみたい。
「ダミアン、何があっても、待ってられるよ」
「いや、待てない。もっと死ぬかもしれない」
あたしはため息をついて、ベッドから出て、ベッドのそばにある部屋履きをパッと履いて、急いで動き出す。他に何を着るかとか気にしない。だってどうでもいいもん。あたしがダミアンのTシャツと短パン姿が気に入らないなら、見なきゃいいだけ。
あたしたちは、食堂まで廊下を駆け足で進んで、みんなが何で騒いでるのか確かめる。部屋に入ると、静けさが部屋に広がり、あたしはみんなを新しい目で見る。みんな怖がって、心配してる。こんな顔見たことない。
「何だ?」ってダミアンが吠えて、イーサンを探そうとキョロキョロしてる。たぶん、そうなんだろう。
すぐにイーサンが人混みから出てきて、息を吐き出す。「やあ、起きてるのか。それはいいニュースだ」
「早く言え」って、ダミアンが唸る。
「分かった。もっと到着した」って、イーサンはいつも通りの口調で言う。
「もっと到着したってどういうことだ?」って、ダミアンの声が掠れて、唸り声みたいになってる。
あたしは左を見たけど、ダミアンが少しずつ制御を失ってることに気づいた。彼のオオカミが出てきて、皮膚に毛が生え始めてる。一番近いところにいた人たちは一歩後ずさって、あたしはそれ以上ひどくなる前に止めようと手を伸ばす。
「ダミアン。ここでやめなさい」
ダミアンがあたしを見て、あたしはあの金色の輝く目しか見えなかった。なんか前と違う気がする。それから、彼が兄や他のオオカミを殺した時に、闇が彼をどうやって抱きしめていたかを思い出した。彼は弱っていて、時間がないんだ。
「また別の群れが襲われたんだ。そいつらはもうダメだって。少なくとも生き残った半数はヴァンパイアと一緒にいて、残りはここにいる」
それがダミアンの注意を引いた。「部屋は足りるのか?」
イーサンは頷いた。「何とかするけど、他の群れからもいっぱい押し寄せてる。戦争はもうすぐそこまで来てる」
あたしは、ダミアンがオオカミを制御しようと苦しんでるのを見て、ため息をついた。彼が壊れそうになった時、あたしは彼のすぐそばに立って、彼を抱きしめようとしたけど、彼は抱き返してくれなかった。「怖くないし、ありのままのあなたを受け入れるわ」
彼は、今までで一番深い呼吸をして、体の震えが止まった。
「ありがとう」って、彼は囁いてから、首を振った。「今夜はみんなが寝れるようにしてやってくれ。明日は準備をしよう」
「明日? 今夜来るかもしれないのに?」
「明日だ」って、ダミアンは唸る。
彼は、戻って行く代わりに、あたしを先に抱き上げて、部屋から連れ出した。ベッドルームに戻るのに時間はかからなくて、あたしを布団の上に投げた。
「ダミアン、どうなってるの? なんでこんな風なの?」
彼は荒い息を吐いて、あたしの上に乗った。「これが最後の夜かもしれない。もし死ぬなら、お前がどれだけ欲しいか知ってほしい」
彼の言葉は優しくて甘い。あたしは手を伸ばして、彼の頬を包み込んだ。「分かってるわ、ダミアン。でも、あたしたちは死なない」