第十一章 - 彼女を守る - ダミアン・ブラックウッドの視点
行きたくないけど、仕方なく歩き出す。足取りはしっかりしてるつもりだけど、一歩一歩が重くて、何度も振り返りそうになる。
彼女には何か惹かれるものがあるんだ。でも、同時に彼女の反応が面白くもある。彼女はすごく意志が強くて、何があっても折れなさそうなんだよね。外の風に揺れる葉っぱみたいに震えてるのに、それでも踏ん張ってるのを見た。私と向き合った時の目には、ちょっとした恐怖もあったし。まるで挑戦みたいだった。
それを考えると、俺の顎がぎゅってなる。彼女が俺を見る目が好きなんだ。
でも、こんな気持ちになっちゃいけないんだ。彼女が俺の心をかき乱したり、変な気持ちにさせたりするのはダメなんだ。マヤはただの目的を達成するための手段なんだ。その目的っていうのは、俺の家族にかけられた予言と直結してる。彼女がまた俺を向いた時のことを考えると、息を大きく吐き出す。恐怖の下には、反抗心みたいなものが燃えてた。あいつを泣かせてやりたくなる。
角を曲がると、俺は階段を下りて、書斎に向かいながら、髪をかきあげる。廊下の暗闇が、マントみたいに俺を包む。普段なら暗闇の中にいると落ち着くのに、今は全然、胸のざわつきを静めてくれないんだ。
彼女の言葉が頭の中で繰り返される。
コントロールって面白い言葉だよね。実際、俺は彼女をコントロールしてる。彼女の全てを、だよ。でも、彼女はそれを否定する。彼女がどれだけ間違ってるか、分かってないんだ。彼女の運命は、もう俺のものと繋がってる。そこから逃れることはできない。
唯一の問題は、彼女の心は手に入らないってことだ。これは、誰かやその体を所有するのとは、ちょっと違う。
やっと最後の角を曲がって書斎に着くと、俺はドアを開けて中に入る。部屋の冷たい空気が、頭の中で嵐が吹き荒れてる俺には救いになる。俺はデスクに近づき、デスクライトをパチッとつける。長い影が部屋の中に伸びて、本棚にまでかかる。しばらくの間、俺はそこに立って、まるで全てに答えられるかのように部屋を見つめていた。
サイモンの言葉も頭の中に響いてくる。俺は彼女を好きになるだろうって言ったんだ。それ自体が、全く別の問題なんだよな。
その言葉にどれだけ真実が含まれてるか、嫌になる。あいつは分かってたんだ。そう言った時に、何をやってるか。でも、俺は彼女を好きになるべきじゃないんだ。彼女は、俺がやりたくもないゲームのパズルのピースに過ぎない。予言は、彼女と同じように、俺を縛り付けてる。
今は、しくじるわけにはいかない。俺たちの周りには、ハゲタカみたいにたくさんの敵がいて、彼女がここにいるって知られたら、この場所を引き裂こうとするだろうから。
特に、彼女が誰か知られたら。
悲しいことに、俺は彼女と上手くいく方法を見つけられなければ、彼女を守ることもできないんだ。
俺はデスクの周りを歩き、椅子に座る。いつも通りの責任の重みが肩にのしかかり、俺の拳はまだ固く握られたままだ。失敗は、特に俺にとっては、ありえないんだ。
ドアをノックする音が、静寂と俺の思考を打ち破る。俺はドアに視線を向ける。「入れ」
ドアがゆっくりと軋みながら開き、エヴリンが入ってくる。彼女の表情は落ち着いているけど、俺の顔に視線が注がれると、鋭い視線になる。「ほら、あの娘、椅子で寝てたわよ。あんたがいなくなってからの数分でご飯食べたみたいだし、様子を見てきたの。邪魔はしなかったわ」
「いい」と俺は答える。「休ませてあげなきゃ。遠吠えが気になってたみたいだけど、俺にはどうしようもないことなんだ」
エヴリンはしばらく俺を見つめてから、ドアを閉める。「ま、彼女は人間だし、アルファ」
俺は喉の奥で低く唸る。「そんなこと、分かってると思うのか? ほとんど人生をかけて、彼女を待ってたんだ。ファーザーが予言について話してくれた時、彼女は俺の唯一の執着になった。そして、今、彼女はここにいる」
彼女の唇が少しだけ歪むけど、視線は変わらない。「全てから彼女を守ることはできないわよ。分かってるでしょ? いつかは気づくわ。群れは隠すのが得意じゃないから」
「まだ、彼女に知ってもらう必要はない」と俺はきっぱりと言う。「彼女が準備できるまで。彼らは隠れなければならない。俺がそう命じたんだから」
エヴリンは首を傾げ、表情が面白そうに変わる。「あら、そうなの? それはいつになるの? 彼女はここにいるんだよ、アルファ。彼らは彼女が準備できるまで待ったりしないわよ。誰かがポロッと言っちゃうし、彼女は遅かれ早かれ知ることになる。それだけじゃなく、敵がすぐそこに迫ってるんだ。いつまでなの?」
俺は顔を背け、デスクの端を掴みながら、散らばった書類を見つめる。「彼女は人間なんだ、エヴリン。この生活にはまだ準備ができてないんだ」
「それで、彼女を脆い人形みたいに扱うつもり? ダミアン、現実を見ろ。私は既に廊下で、仲間のうちの一人がオオカミの姿になってるのを見たわよ。彼女はきっと気づくわ。今夜は特に遠吠えが大きかったのは、みんなが興味津々だったからよ。彼女が私たちにとって何を意味するのか、分かってるの。彼女を隠しておけると思ってるなら、それは間違いよ。敵も遅かれ早かれ気づくわよ。早く考えないと」
俺は返事をしない。
だって、心の奥底では、彼女の言う通りだって分かってるから。
俺が返事をしないのを見て、エヴリンはため息をつく。彼女の表情は少しだけ和らぐ。「あなたがそうしてるのは、彼女を闇の中に置いて守ってるからだって分かってるわ。いつもそうしてるでしょ。思ってなくても、守ってしまうものなの。でも、これは良くないわ。いざって時に、彼女は弱くなるわよ。彼女が私たちの世界のことや、なぜここにいるのかを知らなければ、戦うのを手伝うことだってできないんだから」
俺はエヴリンから顔を背け、デスクの上の書類に視線を固定する。ローグたちの活動に関する報告は、気が滅入る。
「そんなこと、分かってないと思ってるのか?」と俺はささやく。「ああ、すごく分かってるさ。でも、彼女は人間なんだ」