第54章 - コントロールを失う - マヤの視点
寝苦しくて、寝返りばっかり打っちゃう。全部、マジでキツすぎるんだよね。だって、あいつ、もう八日もいなくなってるんだもん。
八日は長すぎるんだけど、なんでこんな気持ちになるのか、自分でもよく分かんない。
やっちゃダメだって分かってる。正直、いなくなってくれてホッとしなきゃいけないのに、全然そんな気持ちになれないんだよね。
ゴロンって横になった瞬間、ほとんど目も開かないうちに、ダミアンがドアの前に立ってるのが見えた。エヴリンを睨んでる。エヴリンは、いつもの椅子に座ってるし。この数日、マジでずーっと一緒にいたんだよね。
あたしが逃げようとしてるんじゃないかって思ってるからなのか、それともただの気遣いなのか、よく分かんないけど。
ダミアンは何も言ってないんだけど、なんか話してるっぽい。またあたしには理解できない、狼特有の会話なんだろうけど、ちょっと知りたい気持ちもある。
斜め目線であいつのこと見てる。汚れてるし、着てる服も、いなくなった時と一緒。マジで最悪だけど、まぁ、しょうがないのかなって。
心の底では、目を閉じて寝たフリしとけって言ってる。これ以上、あいつに近づきたくないんだ。逃げたいなら、もっと頑張って、あいつを置いていかなきゃいけないんだから、情なんか湧かせちゃダメなんだよ。
そもそも、あいつはただの監禁者なんだし。
でも、なんであいつに見つめられると固まっちゃうんだろ?なんで、ドアで会った時にためらっちゃったんだろ?
じっとあいつのこと見てて、ただ見つめていたいって思っちゃう。だから、思い切って目を開けたら、息が止まりそうになった。
あたしが何したか、見えてないのに、あたしのことに気づいたみたいに、あいつの顔があたしの方に向いた。
「ダミアン…」って、あたしは囁いた。
エヴリンは椅子から飛び起きて、編み棒と毛糸を掴んだ。「あたし、今夜は自分のベッドで寝ようと思うわ。アルファ様、それでよろしい?」
ダミアンは唸るだけ。
エヴリンは急いで部屋を出ようと、ダミアンの横を通り過ぎた。ダミアンは一歩、部屋に入った。
あたしはベッドに座り直して、心臓がドキドキしてる。「汚いじゃない。何しに来たの?」
ダミアンは最初は何も言わず、ただあたしを見てる。あいつがいると、部屋全体が圧迫されて、まるで外で嵐が来そうな時の空気みたい。荒れるのは分かってるんだけど、いつ来るのか分からないみたいな。
それから、永遠みたいに長く感じたけど、ただドアの前に立ってるだけで、やっと一歩踏み出した。ドアが軽く閉まる音がした。
「部屋に行って、ちゃんと綺麗にしてくれば?八日もいなかったんだから、そうしたいでしょ?」あたしは毛布を掴んで、胸まで引き上げた。
ダミアンはすぐには答えなかった。代わりに、またあたしに近づいてきて、ずっとあたしの目を見てる。
「大丈夫か?」って、声が裏返ってる。
「ええ、そうは見えない?エヴリンが、あなたがいなかった間、すごく良くしてくれたわ。」
ダミアンはゴクリと唾を飲み込んだ。「もうこれ以上、離れていられない。お前に会わないで、あんなに長い間過ごすのが、どれだけ辛かったか、お前には分からないだろうな。」
心臓がドキドキした。今夜のあいつは、なんか違う。でも、すぐに目が薄暗い黄色に光って、あいつの中の人間じゃないんだって分かった。
あたしが読んでる本みたい。彼らの動物は、本当に彼らを操るんだ。
抑えられてるみたいだけど、やっぱり危険。あたしは、出て行ってって言うべきだ。あたしは動物みたいに所有されるような人間じゃないって、思い出させないと。彼らはそうするのかもしれないけど、あたしは違うんだから。
「なんでここにいるの?シャワー浴びて、綺麗になってきなよ。必要でしょ。」
金色の目が熱い何か、生々しい何かで揺らめいて、あいつの顎が引き締まった。ベッドの横に来た時、あたしはあいつの服を見て、どれだけ汚れがこびり付いてるか分かった。
「ベッドを汚すよ」って、あたしは囁いた。
ダミアンはベッドの端をゆっくりと這い、それからあたしの上に跨ってきた。あたしは後ろに倒れると、あいつはまだシーツの上にいる。あいつの両手が、あたしの両側にマットレスに押し付けられた。
ダミアンの声は、かろうじて囁き声だった。「後で綺麗にすればいい。」
あいつの唇が、あたしの目の数センチ上を漂ってるから、あたしは息を大きく吸い込んだ。空気は変わり、言葉にならない言葉と、まるで二人の間にビリビリと走るような、強烈な緊張で満たされた。こんなに近いと、自分が感じてる惹かれ合う気持ちを否定できない。
そして、あいつはそれを知ってる。
「何が欲しいの?」
「お前だ」って、信じられないくらい小さい声で、あたしはほとんど聞こえなかった。「もう少し待てるけど、お前は俺を狂気の淵に突き落とすだろう。」
あいつの言葉を聞いて、あたしは息をのんだ。目が合った瞬間、鼓動が速くなる。出て行けって言わなきゃいけないのに、あいつの視線が、あたしから言葉を奪う。ためらってしまう。
あたしの心と頭は戦争状態で、もっと戦いたいのに、少しずつ、決意が崩れていくのが分かった。
あいつの肩に視線がいく。シャツの上から、どれだけ硬直してるのか分かる。息をするたびに、あいつは自分の内側の戦いに負けていくみたい。顎が固く締まって、息を吐き出した。
「言葉を言ってくれ、マヤ。出て行けって言ってくれれば、俺は出ていく。」
荒々しい声。
唇が開くけど、言葉は出てこない。そんな言葉、言えるわけがない。だって、言いたくないんだもん。二人の間の熱が、あたしを窒息させ始める。少しだけ近づいてきて、あたしは自分で気づく前に首を傾けた。
毛布を強く掴んで、顎まで引き上げた。「ダメ、こんなことできない。」
ダミアンは唸り声をあげてから、まだあたしを跨いだまま、膝をついて後ろに体を起こした。あたしの視線は、あいつの手が乱れた髪をかきあげるのを追う。「俺は気が狂いそうなんだ。」
「それはあたしの問題じゃない。」
ドアをノックする大きな音で、あいつの頭が横に跳ねた。
「何だ、今度は?」
誰もドアを開けないけど、男が向こう側から話しかけてきた。「群れが混乱してる。行って、不安を鎮めてくれ。」
あいつの目は苛立ちで暗くなったけど、行かないわけにはいかない。「分かった、すぐ行くよ、サイモン。」
「はい、アルファ様。」
ダミアンはあたしの方を振り返って、最後に名残惜しそうに見てから、ベッドから降りた。「これは終わりじゃないけど、お前はもう寝てな。これに対処したら、シャワーを浴びて、また様子を見に来るよ。」
あいつはドアに向かい、勢いよく開けて、廊下の中に消えた。
あいつがいなくなって、ドアが閉まると、あたしは震える息を吐き出し、枕の上に完全に倒れ込んだ。手を伸ばして、無意識に自分の唇に触り、サイモンがノックしなかったらどうなってたんだろうって考えてる。
「なんで、あいつを突き放さないんだろう?」
頭の中は分からないことでいっぱいになって、ある一つのことが明らかになった。ダミアンは、あたしがあいつのものになるまで止まらないだろう。そして、何が一番悪いって?あたしは、止まって欲しくないって思ってることなんだよね。