チャプター48 - 逃げろ - ダミアンの視点
もう一回顔を近づけて、俺たちの唇が触れ合った瞬間、俺の中で何かがはじけた。まるで、ずっと欲しかったものをやっと俺のオオカミが味わえたみたいな、荒々しくて、本能的な感覚。
いや、切望してたって感じ。
もう、後戻りはできない。
マヤは俺の口に息を呑んだけど、離れようとしない。代わりに、俺のシャツを掴む指に力が入って、離すのが怖いみたいに、彼女の体を俺に近づけてくる。ためらいもあって、その瞬間の熱の中に隠れてるけど、俺の気を引く別の何かがあるんだ。
彼女の欲求。
俺はキスを深め、片手で彼女の首の後ろを包み込んだ。もう片方の手は彼女の腰のくびれに添えた。彼女は俺の触れ方に震え、体が俺にぴったりとくっつくまで寄り添う。次に彼女の唇から漏れた音は、俺のほとんど残ってない自制心を破壊しそうだった。
俺のもの。
俺のオオカミはもう容赦なくて、表面を突き破って、もっと多くを求めてくる。印をつけろ。所有しろ。
俺の心の中で聞こえる彼の叫びは無視できないけど、俺はそれに抗わなきゃいけない。まだだ。今は違う。
彼女がこれを全部受け入れてからじゃないと、本当に望むように彼女を自分のものにすることはできない。俺は、彼女の視線と目が合うように、少しだけ顔を離した。俺の息は荒い呼吸になった。
彼女の目は見開かれて、唇は少し開き、頬は赤く染まっていて、もう一度全部食べてしまいたくなるくらいだった。
「マヤ」俺はささやいた。かろうじて聞こえるくらいの声だった。それは願いであり、約束だった。
彼女はまるで現実に戻ってきたかのように俺を見つめた。そして俺はそれを見た。恐怖の揺らぎが戻ってきて、忍び寄ってきた。彼女は俺のシャツから手を離し、ゆっくりと、震える息を吸った。
彼女が何を言おうとしているのか、彼女がささやく前に分かった。
「ダミアン、考える時間が欲しいの」彼女はそう言って、ごくりと唾を飲み込んだ。
俺の顎が硬直し、俺のオオカミは支配権を求めてあがき、俺の視線は、彼女を自分のものとして印をつける場所に落ちた。「じゃあ、好きなだけ考えろ。でも、俺たちの間で芽生えているものを感じていないフリはするな。少なくとも、そこまでは受け入れろよ」
彼女はそれを否定する方法を探すように唇を固く閉ざしたけど、できなかった。できないんだ。
俺は手を伸ばし、震える手で彼女の腫れた唇を親指でなぞった。「お前は俺のものだ、マヤ・シンクレア。どれだけ考えても、俺たちの運命は変わらない」
彼女はまた震える息を吐き出し、俺の聞こえない何かを聞いているかのように、ドアの方に目をやった。「ダミアン——」
俺は息を吐き出し、自分自身を引き離さないように、全身が叫んでいるのに、無理やり一歩下がった。「いいぞ。必要なら逃げろ。でも、遠くまで行けないぞ。俺のオオカミがお前を見つけて、今度は所有するからな」
彼女の視線が俺に釘付けになった。「え?」
「聞こえただろ」俺は低く、荒々しい声で続けた。「逃げろ、リトルワン。逃げろ、そして俺がお前を見つけて、所有する。俺は自分を止められないだろう」
彼女の息が震え、一瞬、俺たちはどちらも動かない。
マヤは俺を見つめ、彼女の胸は速く、不規則な呼吸で上下している。彼女の指は、逃げるか、ここにいるか、迷っているように体の脇でピクピクしている。
でも、彼女は行動した。彼女はドアに一歩近づいた。俺を試すように。自分を試すように。
俺の胸の中で低い唸り声が響き、彼女が逃げたらどうなるかを警告した。俺のオオカミは彼女に飢えていて、俺に約束を果たさせようと迫ってくる。彼は彼女を追いかけて、所有したいんだ。
俺のもの。
俺は鼻からゆっくりと息を吸い込み、コントロールを奪おうとする本能を抑え込もうとした。もし彼女がドアを開けたら、俺は自分を止められるかどうか分からない。
彼女の鼓動は激しく高鳴っている。聞こえる、匂いもする。彼女の恐怖が空気を満たしているけど、その下には何か別のものがある。
欲望。
彼女は何を感じるべきか葛藤していて、俺はそれを全て感じ取れる。
それから、彼女は俺が思ってもみなかったことをした。
彼女の手は震えながらドアノブに手をかけ、掴んだ。俺の視線は彼女の手元に落ちた。
俺の体が止める前に反応した。
たった一歩で、俺は彼女を木の枠に押し付け、片手を彼女の頭の横に添え、もう片方で彼女の腰を抱きしめた。俺の息は彼女の額に触れ、彼女を俺とドアの間に閉じ込めた。
「俺から逃げられると思ったのか?」俺の声はかろうじてささやき声だったけど、何か制御できないものが含まれていた。
マヤは震えた。「せめてドアから出ることはできると思ったの。あなたが私が逃げるかどうか見てすらなかったわね。もしかしたら、もっと食べ物を取りに帰りたかっただけかもしれないのに」
俺はもう少し顔を近づけ、俺たちの唇が数センチの間隔になるまで近づいた。俺の指は彼女の腰に力を込めた。「俺はお前を見てるぞ、マヤ。本当は逃げたくないんだろ。匂いで分かる。俺に追いかけられたいのか?」
彼女は息を呑んだ。「いいえ、そんなことないわ。本当は」
彼女がそう言いながらも、俺は空気中に欲望の匂いを感じていて、それはどんどん強くなっていた。
俺は彼女の頭の横に移動し、俺の唇は彼女の耳の殻に触れた。「でも、俺がお前を捕まえたら…」俺は手を彼女の背中に移動させ、指先で彼女の背骨をなぞった。「お前は俺のものになる」
マヤの手は俺の胸に触れ、俺を押し返すように俺に押し付けたけど、彼女は離れなかった。ただそこにいて、指を俺のシャツの生地に絡ませたままだった。
一瞬、彼女は何もするつもりがないと確信した。彼女は怖すぎて、俺が本気になるのを見たくないんだ。
でも、彼女は俺を驚かせた。
彼女は俺を突き飛ばし、俺を後ろにのけぞらせ、ドアから滑り出た。
「おっと、追いかけられたいのか?」俺はゆっくりと笑った。「準備しとけよ。行くぞ」