第94章 - いい子 - ダミアン・ブラックウッドの視点
マジで認めなくちゃいけないんだけど、俺のパックの中に犯人がいるかもしれないんだよね。前に俺のオフィスに誰かが侵入してて、その時でさえ、俺はそれが仲間じゃないって信じたかった。ただの偶然だって自分に言い聞かせたんだよ。よそ者、ただの間違いだって。でも、もう、全部明らかすぎる。
それにしても、彼らがこれで何を得ようとしてるのか、全然分かんないんだけど。
じいちゃんのメモが、呪いと予言を全部さらけ出したんだ。つがいを持つことが、呪いを解く鍵だって。もし、彼らがファーザーの歪んだ理論に従ってるなら、俺たちの時間はもう少ない。あと数週間かもしれないけど、多分、数日だろうな。
「ま、やっと分かったってとこね」と、マヤが優しく、でも困惑した声で言った。
「でも、サイモン。なんでそんなことするの?一体何が欲しいんだ?意味わかんない」
俺は何が意味するのか考えて、目を回す。全部意味不明だし、一生分からないかもしれない。「とりあえず、今のことと訓練に集中しよう。俺があいつら二人を監視するよ」
心の底では、それが全然役に立たないって分かってる。泣きじゃくってる傷に貼る小さな絆創膏みたいなもんで、ちょっとは止まるかもしれないけど、結局は溢れて破裂するん。マヤと俺は、生き残るためには一緒に逃げるしかないかもしれないって、心の底で思ってる。
「それで、訓練場に行く?」
俺は彼女にうなずきながら、視線をドアに走らせた。「ああ、準備して、でも近くにいて」
俺たちは、それぞれバスルームで準備しながら、あまり話さなかった。彼女は薄いグレーのTシャツと黒いヨガパンツを着ていた。彼女が何を着るか分かってるのは嬉しい。動くのが全然楽になるから。
彼女は俺の服を見て、バスケットボールタイプのショーツにシャツなしだってことに気づいた。「俺のこと、気をそらそうとしてるの?」
俺はびっくりした。「俺のこと口説いてんの?俺のこと、気をそらせるくらい可愛い?」
彼女の頬が赤くなる。「まあ、そうね。昔から魅力的だとは思ってた。ただ、それ以外のことで疑ってただけ」
「俺たちの世界はいつも簡単とは限らない。迷うこともある。でも、運命はいつも何が一番良いか知ってる。道を失っても、運命はちゃんと計画してて、結局は見つけられるんだ」
マヤは床を見てて、泣きそうになったのかなって思ったけど、すぐに涙を振り払って、鼻をすすった。「じゃあ、行こう」
俺の言葉が彼女を悩ませてるのか、それともそれ以外の理由があるのか、分かんない。聞くべきだって思う部分もあるけど、黙っておくべきだって思う部分もある。変なこと言うより、彼女の後を追って廊下を飛び出した。
誰もいない。パックの仲間は一人も見当たらない。ちょっと変だけど、みんな忙しいんだってことにした。
何事もなく屋敷を横切った。訓練場のドアを開けた瞬間、何か起こりそうな気がしたんだけど、ドアを開けたら。
辺りを見回すと、誰もいない。
マヤが俺の腕を掴んで、俺の後ろに近づいてくる。「みんな、どこ行ったの?」
「分かんない」
バランスビームのそばに出ると、ついに誰か現れた。イーサンが俺たちを見て、笑ってる。
「みんな食堂で食べてるみたいだよ。ま、俺たち以外はね。俺たちって、ちょっと寂しいやつらだよね」
俺の視線は西に落ちて、太陽が沈んでることに気づいた。「あ、やべ。夕食だ。忘れてた」
マヤは笑って、俺の腕を遊び心で引っ張った。「食べる?それとも訓練する?」
「お腹すいてる?」って、彼女の方を見て俺は聞いた。
彼女は首を振った。「訓練に来たの。食堂は開いてるでしょ?」
俺は小さく笑った。「ああ、年中開いてるよ。だって俺たちは食いしん坊だから。時々、食べ物以外にも欲しくなるし」
彼女が俺を大きな目で見上げてるだけで、俺の狼が顔を出してるのが分かった。彼女は右手で手を伸ばして、指先で俺の頬を撫でた。「お前の目」
俺の口角が上がってニヤけた。「うん」
「あたしも金色になる?」
俺はすぐ答えそうになったけど、彼女が何を聞いてるのか分かった。彼女は、俺のものになる時って言ってるんだ。彼女がやっと俺たちの間のことを認めてくれるって考えただけで、胸がドキドキする。「ああ、お前の目も光るよ、でも何色かはまだ分かんない。お前の狼も、すごいことになるよ」
俺の手が震えながら、彼女の頬を包むように持ち上げた。
俺はかがんで、キスしようとした時に、誰かの咳払いが聞こえた。
「まだいるよ」と、明らかに俺たちの愛情表現にイラついてるのが聞こえた。
俺は横を向いて、彼を見た。彼はひるんだけど、静かにした。俺が望めば、今キスできるし、彼は何も言えないのに。
「訓練するんだよね?」
マヤの笑顔が大きくなった。「もしあなたがちゃんとやって、ちゃんと訓練してくれたら、いい子にしてたら、キスしてあげるわよ」
「いい子?」俺は息をのんだ。
イーサンは笑い始めたけど、俺が彼の方を向くとすぐに止まって、低い唸り声が喉から聞こえた。
「面白くないぞ」って俺は低い声で言った。
マヤは俺の顔に手を置いて、俺を彼女の方に向かせた。「ねえ、俺を見て。俺のことだけ考えて。すごく訓練しなきゃいけないの。それに教えてくれるのはあなただけ」
「はい、アルファ。未来の伴侶のためにいい子にしてね」イーサンは、笑いをこらえながら言った。
彼女は俺の顔をしっかり掴んでるけど、俺はそれでも彼の方を見てた。
「お前こそ、いい子になって、ちゃんと訓練して、ちゃんと見張ってろよ」
俺が何を言ってるのか理解して、恐怖が彼の顔に広がった。文句を言う代わりに、俺の言葉を受け入れて、頭を下げて出て行った。「分かりました、アルファ。訓練に行きます」
「あれは何?」
「ああ、知ってるでしょ。お前を見失って、俺から逃げそうになったから」って、俺はニヤけながら言った。「でも、本当は、いい子って呼ばれて笑うのはやめてほしいだけなんだ」