第百一章 - 深い感情 - マヤの視点
その夜は眠れない。
ダミアンのベッドで、彼の隣に横たわって、丸くなってる。体は動かさないようにして、彼を起こさないようにしてるけど、頭の中はフル回転。
部屋に落ち着いてから、彼はシャワーを浴びた。手伝ってあげなきゃいけなかったし、ベッドに連れて行ってから、私もシャワーを浴びた。二人とも彼の服を着て、結局ベッドに入った。
彼はすぐに寝ちゃった。たぶん、自分で治癒するためなんだろうけど。でも、私は?いや、寝れない。こんな気分じゃ。
まるで、頭の奥でずーっとつきまとってくる感情から逃げようとしてるみたい。
目を閉じると、ファーザーと弟が来た日のことばっかり思い出してしまう。ファーザーが私を売り飛ばした時、彼は家にいなかったけど、今は私がダミアンから買い戻せるって確信してるみたいで、まるで私が所有物みたい。ダミアンも私のためにお金を使ったけど、彼の所有物だって感じはしないんだよね。私たち二人の間は違うし、ファーザーの時みたいに、駆け引きの駒だって感じもしない。
それでも、考えさせられると辛い。
ダミアンのゆっくりとした、規則正しい呼吸が空気を満たしてる。ぐっすり寝てるから、一瞬、考えが中断される。横を見て、彼の様子を確認したら、まだ白い包帯は綺麗だった。
彼にかけた毛布も、さっき寝た時と同じ場所にある。それも良い。あまり動いてないってことだから、休んでるんだ。
どうやら、私だけが安らぎを見つけられないみたい。
私はベッドで急に起き上がって、暖炉の近くの椅子に移動する。まだ火はついてないけど、隅に電灯があって、薄明かりが灯ってる。椅子に座って、後ろからスローを持ってきて、体に巻きつけた。ベッドで寝ている彼をもう一度見ると、指がそれをさらに強く握りしめる。まだ平和そうにしてる。
彼はすごく落ち着いてて、穏やかそう。ほっとため息をついて、私が彼を救ったんだって気づいた。それで十分なはず。勝利を感じて、心が落ち着くはずなのに。
なんで、まだ何かを失いそうな気がするんだろう?
ダミアンとの絆は深まってる。胸の中で感じる、今まで感じたことのない感情。これは人間に対して感じるようなものじゃないし、ただのドキドキとも違う。愛よりもずっと深くて、すごく心地よくて苦しい。まだ全部は理解できないけど、そこにあって、私を捕まえようとしてることはわかってる。
視線を合わせるたびに、触れ合うたびに、それは深まる。これが欲しい。彼が欲しい。
でも、私がこの道を選んだんじゃないってことは忘れられない。運命が私を選んだんだ。
まあ、ファーザーが私を売ったってのもあるし。
胸の奥に、鋭くて苦い痛みが走る。誰も声に出して言ってないけど、本当にそうだった。彼は私を見つけて、私のためにお金を要求して、ファーザーはそれに同意した。運命だったとしても、最悪だ。
でも、ダミアンは私に良くしてくれる。彼は私を信用してくれて、もうそんなに威圧的じゃなくなるかもしれないって認めた。「できるとわかったから」だって。たぶん、彼は間違ってたって。
じゃあ、どうすれば彼を心から愛せるの?彼は、この一部だったって知ってるのに。
「眠れなかったの?」彼は突然聞いてきて、ベッドで起き上がった。
私は固まって、ゆっくりと肩越しに顔を向けて、「ううん、ただ、寝たくなかっただけ、かな」
少し間があってから、彼は咳払いをした。それから、彼の足がベッドの横のラグに降りるのが聞こえた。ベッドの足元から毛布を取って、体に巻きつける音がした。
「大丈夫?」彼は不安そうに言った。「今日は色々あったからな」
彼がすごく気にかけてるように聞こえるのが、少しムカつく。すごく。
「ううん」私はもう一度言った。今回はもっと小さく。
気づいたら、彼は椅子の横に立っていた。「何が?」
私は彼をちゃんと見上げた。彼の顔は薄明かりに照らされて半分だけ見えて、残りの顔は暗闇に隠れてる。髪はボサボサだけど、見える範囲では、彼はもう元気そうだった。
「売られたの」私は自分に言うように、彼よりも小さな声で言った。「それが悪いことなの。すべては私が売られたことから始まったんだ」
最初は、彼は私の言葉を理解してないみたいだった。彼はただ見つめてたけど、それから全部理解したみたいだった。
「私がお金のためにあなたに渡されたの」私は震える声で続けた。「まるで、私がただのガラクタ市で買う所有物みたいに。誰も私に聞かなかった。誰も。あなたでさえ。運命って言うかもしれないけど、それでも辛い」
彼はため息をついて、私の隣の椅子に座って、崩れ落ちた。「俺も頼んだわけじゃない。血によって縛られるような存在として生まれたいなんて、誰も頼まないだろ。自分の身に何が起こるかなんて、誰も頼まないけど、運命はやり方を見つけるんだ。ああ、クソだよ。時には、あの時逃げずに殺させとけばよかったって考えた。そっちの方がずっと楽だっただろうに」
私は口を開けて驚いた。
それから彼は付け加えた。「でも、人生は痛みなんだ。時々、ひどいことを経験して、そこから抜け出す方法を見つけるんだ。この状況から抜け出す方法があるし、俺には目的があるってわかってる。お前にも」
私は何も返事できなかった。すべてのことが、荒れ狂う渦のように頭の中を駆け巡ってる。
ダミアンは髪をかき上げた。「俺が、こうなったことに対して罪悪感を抱いてないと思うのか?お前がここにいるために、どれだけの犠牲を払ったか知らないと思ってるのか?」
私は彼を見つめた。瞬きもせず、ほとんど息もしてない。頭の中では、まともな返事も作れない。ただ見つめることしかできない。
私の頭の中は、爆発、大砲、そして人生を救うために真っ直ぐに走ることさえできないやつがいるような、戦場みたいだった。彼の言葉はすごく響いて、認めたくないほど深く心に刺さった。彼の色んな面を見てきたけど、これは予想外だった。
彼がそんな風に感じてたとか、そんな風に考えてたなんて、知らなかったんだ。「俺は…」言葉が口から漏れて、私は遮った。何を言えばいい?