第2章 もう生徒会長にはなれない!
ビッキーの見た目も成績も、モニカより全然良くなかったんだよね。いつも自慢してた家のことだって、まさかこんなにボコボコにされるとは思ってなかっただろうし。そりゃあ、ビッキーもジェラシー燃えまくりだよね。
「モニカ、車に乗って」 ギャビンは紳士的に、みんなの前でモニカの車のドアを開けてあげた。モニカのこと見てる時のギャビンの目なんて、澄んだ水みたいに優しいんだもん。
「うわー、かっこいい! あんなイケメンでお金持ちのお兄ちゃんがいたら最高なのに」
「マジで羨ましい…」
ビッキーはクラスメイトたちの言葉を聞いて、怒りと嫉妬で血が沸騰しそうになった。「何よ、この田舎娘、調子に乗ってるだけじゃない。シンデレラの話みたいなもんでしょ!」
ビッキーの言葉を聞いて、モニカは車に乗るのをやめて、ギャビンの顔色は一気に曇った。
「ビッキー、何騒いでるんだ?」 家庭教師が不機嫌そうに言った。
校長はビッキーの家のこと知ってたけど、インペリアルキャピタル株式会社の方が学校の理事会よりずっと力持ってるからね。ギャビンを怒らせたらまずいってことで、校長はすぐ家庭教師を叱った。「お前が選んだ生徒会長って、これかよ?!」
「私、は…」
モニカはすかさず火に油を注いだ。「先生、生徒会のリーダーは学校のイメージに影響するんだから。今度生徒会長選に出る時は、賄賂のことばっかり覚えてないで、せめてアホじゃない人を選んだ方がいいんじゃない?」
家庭教師の顔はみるみるうちに赤くなった。モニカが、みんなの前で賄賂のこと言い出すなんて思ってもみなかったんだもん。
モニカを生徒会長から外して、ビッキーを推薦した件は、校長の承認を得てたんだよね。
モニカが不機嫌そうなのに気づいたギャビンは、校長を一瞥して冷たく言った。「校長、どうすればいいか分かってるよな?」
家庭教師は、この数日、ビッキーがモニカを陥れようとしてたことを思い出して、顔面蒼白になった!
「何てことだ!」 校長は家庭教師を厳しく叱責した。「ムーアさん、心配しないでください。すぐに解任します!」
家庭教師はポカーン、ビッキーも固まっちゃった。家柄で手に入れたはずの生徒会長の座は、もう彼女のものではなくなったんだから!
「モニカ、行こう」 ギャビンはモニカを見ると、さっきまでの真剣な顔とか冷たい雰囲気は一瞬で消え去って、溺愛した笑顔になった。
モニカは、ちょっとプレッシャーを与えて、ビビらせたかっただけ。まさかギャビンがこんなに助けてくれるなんて思ってなかったし、モニカはこの見知らぬ親戚のこと、ちょっといいなって思い始めた。
お兄ちゃんがいるって、悪くないかも。
「うん」 モニカは車に乗り込み、ギャビンは彼女と祖母を乗せて、みんなの驚きと羨望の視線の中、その場を後にした。
すぐに、モニカが何年も祖母と暮らしていた小さな家に到着。ギャビンはモニカの荷物を自分で持ってあげようと、一緒に家に入った。
モニカの荷物なんて、ほんの少ししかないんだよね。ノート一冊、ランドセル、それに服が何着かだけ。
「大丈夫だよ、インペリアルキャピタルに着いたら、新しいの買ってあげるからね」 ギャビンはモニカが悲しむのを心配して、優しく慰めた。
「別に、そんなにたくさんいらないの」 モニカは祖母の腕を掴みながら、落ち着いた口調で言った。
モニカは面倒なのは嫌いで、いつもできるだけシンプルにしてるんだよね。
それを聞いた運転手は、びっくりして目が飛び出しそうになった!
インペリアルキャピタル株式会社の取締役であるギャビンが、今までこんなに人に媚びられてきたのに、女の子に物を買ってあげようとして断られるなんて、初めてのことだもん!
ギャビンを怒らせた人の末路を想像して、運転手は恐る恐る頭を下げて、車に寄り添うようにして、目立たないようにしていた。
でも、ギャビンは全然気にせず、溺愛した笑顔でモニカに言った。「分かったよ」
運転手は呆然とした。ギャビン様って、この家に帰ってきたばっかりの妹には、特別優しいんだな…
あの『彼女』だって、こんな扱い受けたことないのに!
車に乗る前に、モニカは何度も祖母に、体に気をつけるようにって言ってて。モニカが話してる時の、いつも冷たいモニカの目が、温かくなったんだ。「おばあちゃん、また会いに来るから」
「分かってるよ…」
祖母は涙を浮かべながら頷いた。最後に、モニカを手放すのが名残惜しそうに、モニカが車に乗るのを見送った。
車が遠ざかっていく中で、モニカはバックミラーに映る祖母の姿が小さくなるまで、目を離さなかった。
「もし良かったら、おばあちゃんもインペリアルキャピタルに呼んであげようか。住むところも用意するよ」 ギャビンはモニカの寂しそうな様子に気づいて、心配そうに言った。
「大丈夫、ありがとう。この町に慣れてるから、インペリアルキャピタルに行くと落ち着かないと思うの」 モニカはそう言った。もしそうでなかったら、自分からそうお願いしてたはず。
モニカはなんて気が利くんだって、ギャビンはますますこの妹のことを愛おしくなった。
誰も話さなくなった。ギャビンは、モニカに静かな時間を与えたかったんだ。
モニカは窓の外を見た。今まで隠れてた町は、どんどん遠ざかっていく。
祖母と別れたんだから、もう自分を隠す必要はないんだよね。
車は数時間かけて、インペリアルキャピタルに戻った。
「着いたよ。お母さん、お父さん、おじいちゃんが待ってるよ」 ギャビンはムーア家の屋敷がある方角を指した。
モニカはムーア家がどんなとこか知らなかったけど、この屋敷と別荘は、めっちゃ豪華。普通の人じゃ住めないから、ムーア家はお金持ちで力があるんだろうなって思った。
でも、モニカはそれを見てちょっと頷いただけで、普通の人みたいに興奮したり驚いたりしなかった。
みんなが車から降りた後、モニカはギャビンと一緒に家に入った。
油絵が飾られたギャラリーを通る時、執事が絵の説明をしてくれた。どれも有名な、価値のある絵らしい。
モニカは油絵を見ながら、心の中で考えてた。顔には全然感情を出さずに。
実は、この絵のうち2つは偽物なんだよね。でも偽物の作者も才能あるから、モニカと、世界で2人のマスターしか、偽物だって気づけないんだ。
しばらく歩いて、ついにロビーに着いた。モニカが入ると、3人の人がいた。
上品な格好をした夫婦が、主賓席に座っていて、モニカと同じくらいの年の女の子が、ソファーに座ってた。
「おじいちゃん、お母さん、お父さん、妹を連れてきたよ」 ギャビンが言った。
それからナンシーとジェフリーは、ギャビンの後ろから入ってきた背が高くてスリムな女の子を見た。
その女の子は、細くて白い。シンプルな格好だけど、綺麗で、繊細で、可愛らしい。目がキラキラしてて、誰もが見入っちゃうような感じだった。
ナンシーはモニカを見ると、すぐに目を赤くした。「モニカ…!私の娘だわ!」