52. 緊張した出会い
「ケネス・ヤング」ってスーザンが言った。
その名前、ハンナは全然ピンとこなかったんだけど、苗字を聞いて、なんか引っかかるなーって。
「サラ・ヤングの弟よ。あなたの旦那さんの元カノの」って、スーザンが続けた。
ハンナは、もうなんか嫌な感じになっちゃった。なんでアルデンは、サラの家族と繋がりのある会社と仕事してるんだろ? 意図的なのかな、それともただの偶然?
でも、ハンナは冷静になろうとした。ビジネスの世界では、そういうことってあるもんだし。個人的なことと仕事は関係ないし。それに、アルデンはもう、サラとは何もないって言ってたよね? あいつに対しての気持ちなんて、全部なくなってるって。
だから、ハンナが心配することなんて、何もないはず。……だよな?
「ハンナ、大丈夫?」って、スーザンがハンナが黙っちゃったから心配そうに聞いてきた。スーザン、なんか気まずそう。「こんな話、しちゃってごめんね」
「ううん、大丈夫だよ、スーザン。アルデンがゴールドタイムのこと、何か言ってたかなーって思い出してただけ」
「気にしないで。あたしが聞いちゃっただけだし、それは良くないことだったわ」
「てことは、アルデンはバーナードに話したんだ?」
スーザンは頷いた。「ミスター・ガルフマンから聞いた話だと、ケネスがジャイアンツの役員の一人だってこと以外は、心配することないって」
ハンナは、アルデンはサラの家族が、個人的なこととビジネスをゴチャゴチャにするのを警戒してるのかなって思った。
「じゃあ、あたしは仕事に戻らなきゃ」スーザンが立ち上がった。「大丈夫よ、ハンナ。あなたの旦那さんは、サラのことなんて考えないわよ。彼を今の男にしたのは、あなたなんだから」
ハンナは微笑んだ。「ありがとう、スーザン」
スーザンが部屋を出て行って、ハンナはそこに座って、顎に手を当てて考えた。サラの家族のことなんて、考えたくないのに、ちょっと不安になっちゃう。サラとか、家族がどこに行ったのか、誰も知らなかったのに。なのに、また現れたんだから。
まるで、ハンナに穏やかな生活なんてさせたくないみたい。
「大丈夫、きっとうまくいく」って、ハンナは独り言を言った。
ハンナが仕事を再開しようとした時、電話が鳴った。画面を見たら、アルデンからだった。
「もしもし、ダーリン」ハンナは明るく挨拶した。
「ハーイ、ベイビー。今日、早く帰ってこれない? 3時か4時くらいに、オフィスに迎えに行くよ」
「まだ仕事始めたばっかりなのに、もう早く帰ってって?」ハンナは小さく笑った。
「会いたいんだもん」
「バカだね」
「じゃあ、今夜、ジャイアンツとゴールドタイムの関係者を集めたガラディナーがあるんだけどさ。君が奥さんだから、一人で行きたくないんだ」アルデンはちょっと間を置いて、「もちろん、テスコのオーナーもね」
「ふーん……テスコをジャイアンツに紹介したいんだ?」
「なんでわかるんだよ」
「わかった」ハンナは頷いた。「3時に迎えに来て」
「了解。また後で」
……
アルデンは、3時ちょっと前にテスコに到着した。ハンナはスーザンにさよならを言って、旦那さんに会うために急いで階段を降りた。アルデンはすぐに、彼女をサマーヒルのダウンタウンにあるブティックに連れて行ったけど、ハンナはまたドレスを買うんだって確信した。
「まだドレスあるのに、なんでまた買うの?」ハンナは車から降りながらため息をついた。
アルデンはすぐには答えなかった。車から降りて、奥さんの腕を取って、目の前の豪華なブティックに向かって歩き出した。
「君のドレスは全部着ちゃっただろ」アルデンは囁いた。
「うん、それで? また着ても良くない?」
「いや、着て欲しくないんだ。何か新しいのを着て欲しい」
「それ、あんまりエコじゃないね」
アルデンはただハンナの鼻をつまんで、それ以上何も言わなかった。
店員さんが出迎えてくれて、すごく親切に対応してくれた。色んなスタイルのドレスを見せてくれたけど、ハンナは、肩が隠れてて、足首まである白いドレスに一番惹かれた。
「黒いの買ったら? セクシーに見えるよ」アルデンはからかった。
ハンナは目を細めた。「そんな露出の多い服で、みんなに見られたいの? まあ、別にいいけど」
「ダメ」アルデンはすぐにハンナを後ろから抱きしめた。「誰も君を見て、変なこと考えたりして欲しくないんだ。君は俺だけのものなんだから」
店員さんは、アルデンとハンナの仲睦まじい様子を見て、笑いをこらえていた。
ドレスを買った後、アルデンはハンナをサロンとスパに連れて行った。ハンナは文句を言ったけど、アルデンはビューティーケアを受けさせるって譲らなかった。ハンナは車に寄りかかって、ふくれっ面してた。
「髪は家でできるのに、ダーリン」
「ダメだ。サロンに行って、スパも行って、好きなようにしなよ。7時に迎えに行く」
「でも……」
「準備できたら迎えに行くから」アルデンはそう言って、家に戻った。
ハンナは、スパとサロンに行くのは、本当はすごく大事なんだけど、あんまり気が進まなくて、小さくため息をついた。自分をケアする女性は、魂も体もちゃんとケアされてるから、もっと魅力的になるもんだからね。
結局、ハンナはサロンに入って、アルデンの言う通りにした。
……
ハンナはもう新しいドレスを着ていて、髪もセットして、メイクも終わってた。メイクアップアーティストは、自分の仕事に満足したように微笑んだ。
「すごく綺麗よ、ベイビー」メイクアップアーティストは、ハンナの背中をそっと叩いた。
ハンナが立ってレジに向かおうとしたら、誰かが急いで更衣室から出てくるのが見えた。その女性の髪はブロンドで、半分濡れてた。短い赤いドレスを着ていて、すごくセクシーで官能的だった。
ハンナは、それを見て驚いた。
「ごめんなさい、なんか騒がしくしちゃったかしら?」その女性は小さく笑ったけど、声もすごく甘かった。
ハンナはただ首を振った。「全然、大丈夫です」
「今日のイベント、急だったから。ガラディナーに出なきゃいけなくて。ラッキーなことに、いつも行ってるサロンでメイクと髪をセットしてもらえたの」って、長く話した。
「あー、そうなんですね……すごい偶然ですね」ハンナは本当に気まずくて、何を言えばいいのかわからなかった。
「あなたのドレス、すごく素敵ね。きっと注目の的になるわよ」って、その女性はハンナにウィンクした。
「ありがとうございます」
その女性は、ハンナに手を差し出した。「サラって言うの」
サラ・ヤング。ハンナは信じられなかった。
「長いことサマーヒルを離れてたんだけど、やっと戻ってきたの」
「はじめまして」ハンナは彼女と握手した。
「お時間取らせてごめんなさいね。じゃあ、今夜のイベント、楽しんで」
「はい」
ハンナは急いでレジに行って、色んな気持ちを抱えながらお金を払った。体がすごく冷たくて、早くここから出たいって思った。
なんで来たんだろ? なんで? そんな疑問がハンナの頭の中をぐるぐる回って、すごく不安になった。
ハンナは、道端でアルデンが迎えに来るのを待ってた。ディナーに出席するの、やっぱりキャンセルした方がいいのかな? だって、サラもガラディナーに来るって確信してるんだから。