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「その人が誰だか、本当に知らないの? あたしに話しかけてきた時の感じだと、知ってると思ってたんだけど」 ラナがそう言って、ジュリエットにスマホを渡した。そこには、アレックスの母の写真が表示されていた… ジュリエットは、その美しいお姉さんをじっと見たけど、誰だか全然わからなかった… まったく知らない人だったんだ… 「もしかしたら、間違えられたのかも」 ジュリエットが言うと、ラナは首を横に振った。「そうは思わない。なんでわざわざあたしたちの職場に来て、あんたのことだけ指名したんだよ?」 ラナの話はすごく納得できて、ジュリエットはますます気になった…
「名刺とか、そういうの渡された?」 ジュリエットが聞くと、ラナはまた首を横に振った。「ううん、あんたのことだけ聞いてきて、いなかったからって言ったら、名前だけ教えて帰った。それだけ」 ラナが説明してくれた…
ジュリエットは、その話に深くため息をついた… ラナにバイバイして、バス停に向かいながら、色々考えようとした… 頭の中には、アレックスの名前がぐるぐる回ってる… 疑問が頭の中を駆け巡る…
「まさか…」 彼女は息をのんで、家のドアを開けた… ジュリエットは、リビングで1時間くらい、ずっと考えてた… あと数時間後には、アレックスが夕食に来る… 疑ったり、怪しんだりするような態度を取りたくなかった…
テーブルの上に置いてあったパソコンを手に取り、「アレックス」って名前を検索エンジンに入力した… 自分の疑いを確かめたかったんだ、それだけ… 写真を一枚見れば、あるいは、ミシェルと彼女の息子の写真でも…
すぐに、ジュリエットは検索に夢中になった… 彼の写真を見つけるのは大変だったけど、30分以上検索した結果、彼女は息をのんだ… キーボードの上で手が止まった… 自分の目に映っているものを信じられなかった、目が大きく見開かれた… ついに、アレックスの写真を見つけた…
「アレックスって…アレックス・グラハム」 ジュリエットは信じられないって感じでつぶやいて、パソコンを閉じた… 口はあんぐり開いたままで、自分の発見を理解するのに数秒かかった… なんで言ってくれなかったの! ちょっとは疑ってたけど、まさかそんなことないって、心の奥底にしまい込んでたんだ… いろんな車… ホテルの部屋… 勤務時間中に、簡単に職場を抜け出せるところ… 自分のことについて、話そうとしないところ… 全てのサインはあったのに、無視して、それはありえないことだって、自分に言い聞かせたんだ…
億万長者… グラハム帝国のオーナー… 検索を続けると、彼についてさらに色んなことが分かってきて、本当にショックを受けた… 想像以上に金持ちだったんだ… 個人的なジェット機も持ってるし、島まで持ってる… それは、彼の祖父母が所有していたけど、相続で彼に渡ったものなんだって… 別荘もたくさんある… 自分の土地も持ってる… 子会社もいっぱい… あたしたちが働いてるホテルも、彼のたくさんの子会社の一つだった…
病院まで… ジュリエットはもう検索できなくなった… 立ち上がって、自分の小さいリビングの中を歩き始めた… ひょっとして、彼はお金目当てだって思われるのが嫌だったのかな… ううん、そんなことはないと思う…
じゃあ、なんで自分身分を教えてくれなかったんだろう… ジュリエットは、もし知ってたら、付き合ってたかどうか自信がない… 二人には、まるで違う世界にいるって感じがする…
ホテル… あれって、あたしのおかげで就職できたのかな… 最初から変だとは思ってたんだ… じゃあ、昇進はどうなの… ジュリエットは深呼吸して、落ち着こうとした… 歩くのをやめて、時間を確認した… もう7時過ぎてる… 時間のことに全然気がつかずに、何時間も彼のことを検索してたんだって気づいて、ジュリエットはため息をついた… いつ来てもおかしくない…
「ミシェル・グラハム」 彼女はつぶやき、髪をかきあげた… ちょっと引っ張ってみたりして… なんで彼のお母さんは、あたしの職場に来たんだろ…
彼のお母さんは、あたしたちのこと知ってるのかな? だから、あたしがいない時に、職場まで来たのかな? 「たぶん、認めてないんだろうな」 ジュリエットはそうつぶやいて、また部屋の中を歩き始めた… もし、あの時仕事に行ってたらどうなってたんだろう… ドラマみたいに、ビンタされたりしたのかな…
彼のお母さんは、息子から離れろって言いに来たのかな… 想像したら、ゾッとした… そんなことになったら、めっちゃ恥ずかしいよ…
こんな状況、どうすればいいんだろ… 付き合い始めたばっかりなのに…
彼女はソファーに座った… ベルが鳴るのを待つ間、時間はゆっくりと過ぎていった… 時間を数えているような気分だった… そしてついに、8時近くになった時、ドアベルが鳴った… 彼女は慌てて立ち上がり、ドアに向かったけど、ドアノブを掴もうとしたところで手が止まった…
「落ち着いて、ただ質問するだけ」 ジュリエットはそう自分に言い聞かせて、ついにドアを開けた… 彼がそこに立っているのを見て、心臓がドキドキし始めた… 笑顔で自分を見てる人に、悪い意図なんてあるわけないじゃん…
「やあ」 アレックスが言って、家の中に入ってきた… 彼は彼女の頬にキスをして、家に入ってきた… ジュリエットは固まった… 心臓が胸の中で激しく鼓動してる…
「ドア閉めないの?」 アレックスは家に入ってきて、彼女がまだドアの前に立っているのに気づいて言った…
ジュリエットはドアを閉めて、深呼吸してから、彼を見た…
「あなた、アレックス・グラハム?」 彼女は低い声で言った… すると、アレックスの笑顔はすぐに消え去った…