第105章:特別な特権なし
周りの人たちの間から、またコソコソ話が始まった。
「あいつ、頭おかしいんじゃない? 綺麗かもしれないけど、何でもありだと思ってんのかな」
「パロマ家のプリンセスを怒らせたやつはロクなことにならないんだよ。俺、この目で見てきたもん!」
「つーか、最初から挑発したのはエイミーの方だしな。何か揉めてたのか?」
エイミーは、他の人の前でそんなこと言えるわけない。ほぼビンタされかけたし、病気のフリしなかったら、マジでボコボコにされてたかもしれないんだから。
考えれば考えるほどムカついてくる。全部、マルティナがいるからだってエイミーは思ってた。マルティナがいなかったら、こんな屈辱味わなくて済んだのに! 私、パロマ家の貴重なプリンセスなのに!
エイミーとマルティナの出会いは、まるで火星と地球みたいな衝突。どっちも全然譲る気配なしで、ガチでやり合う準備万端って感じだった。
状況が悪化していくのを見て、アレハンドロはちょっと困った顔してた。でも、ぶっちゃけ、アレハンドロはマルティナを応援してたんだよね。
女の人のバックグラウンドなんて、別にどうでもいいじゃん。普通の家庭出身でも、関係ない。本人がしっかりしてて、優秀なら、それで全部オッケー。
エイミーは、自分の立場を鼻にかけて、他人より優位に立とうとしてるだけなんだから、それ以外、何もないんだよ。
「マルティナ、やりすぎ! 今、この場にいる人たちって、すごい人たちばっかりなんだから。あんたなんか、何にも価値ないでしょ!」 エイミーはもう我慢できなくなって、たくさんの人の前で本音をぶちまけた。
見てられないって感じで、アレハンドロは前に出て、マルティナの前にさりげなく立ちはだかり、エイミーの敵意むき出しの視線からマルティナを守った。「ミズ・パロマ、何はともあれ、ミズ・マルティネスは、僕らロドリゲス家の友達なんだ。もうやめてください。言葉は慎重に、後々面倒なことになるから」
エイミーは、その言葉の裏に隠された脅しに気づかないわけがない。まさか、こんなにたくさんの人が、マルティナのために躊躇なく集まってくれるなんて思ってなかったんだから。
でも、このマルティナのどこがいいの? 自分のものじゃない場所を、無理やり占領してるだけの恥知らずな女じゃない?
でも、エイミーはアレハンドロへの面子もあって、あまりにもひどいことできなかったんだ。内心ではムカついてても、今は怒りを抑えて、「勘違いしないで。ミズ・マルティネスと話してただけよ。でも、見て! あの人の私に対する態度! 私の顔を平気で叩くなんて。パロマ家の評判に関わることよ。ミズ・マルティネスが間違ってると思わない?」
エイミーは頬を抑えながら、涙をこらえようとしてた。マジで痛かっただろうし、マルティナは全然手加減してなかったみたいだし。
アレハンドロは涼しい顔で、「それで、どうしたいの?」って聞いた。
エイミーはストレートに「もちろん、そのビンタをお返ししたいわ」
「それは難しいかもしれないね。さっきも言ったけど、ミズ・マルティネスは僕らロドリゲス家の友達だから」 アレハンドロは笑顔を作ったけど、なんか作り笑いって感じで、全然本気じゃない。「それに、妹の親友でもあるんだ。もしロドリゲス家の人に何かあったら、僕の責任になるから」
アレハンドロの丁寧だけど、頑なな態度は、エイミーを言葉につまらせた。
明らかに、アレハンドロはマルティナを応援したいんだよね。でも、エイミーが公の場で怪我したことについては、わざと触れてないし。これは、明らかに肩入れしてるってことだよね?
マルティナでさえ、自分の行動はちょっと行き過ぎだったって思ってたから、エレナのことを見直した。
マルティナ的には、早くこの件をベンジャミンに報告して、この状況から抜け出せるようにしたいって考えてた。まさか、こんな肝心な時に、アレハンドロが助けてくれるなんて、思ってもみなかったよ。
色々考えた結果、マルティナは「家を愛する気持ち」だって気がついた。アレハンドロは、いつも妹のことめっちゃ大事にしてるし、それはマルティナも知ってた。ただ、それが露骨に出てなかっただけなんだよね。
この時、エレナもすごくホッとした気分だった。
今すぐ、兄にグッジョブって言いたい! さすが、ロドリゲス家のイケメン!
エイミーはめっちゃムカついて、胸がドキドキしてた。このままじゃ、心臓発作起こしそう。
エレナはまたしても皮肉を炸裂させた。「パロマ、もうやめなよ。この前も、大事な時に突然具合悪くなってたけど、怪しいと思ってたんだよね」
「でも、あえて見逃してあげただけ。まさか、また同じ手を使う気? 負けそうだから、病気のフリして逃げようとしてるんでしょ?」
「念のため、ここにうちの主治医がいるから。もし病気のフリしたら、診察させてあげる! 」
「耳が聞こえなくなったり、口がきけなくなったり、変なことになっちゃっても、私は知らないよ。だって、先生、そんなに複雑な病気とか得意じゃないんだもん。精一杯頑張るしかないから。だから、やってみたら?」
アレハンドロの目に笑みが浮かんだ。妹の意地悪な言葉、ちゃんと聞こえてるんだよね?
マルティナの口元には、かすかな笑みが浮かんだ。こんなにたくさんの人が、自分の味方でいてくれるって、最高だね。
その言葉を聞いて、エイミーはもう病気のフリするのをやめた。もししても、すぐにバレるだろうし。エレナ、マジで狂ってる!
「もう…いいわ…今日のことは、絶対忘れられないわ!」 エイミーはそう言った。
アレハンドロは状況を見抜いてたけど、それを口には出さなかった。「それでいい。もう遅いし、ミズ・パロマ、座ってて」
…
アレハンドロはエイミーに、何か特別なことしてあげたりしなかった。
アレハンドロが関わったことで、この茶番劇はあっけなく終わった。
マルティナは、もっとカオスな状況になると思ってたから、ちょっと申し訳ない気持ちだった。まさか、エレナとアレハンドロまで巻き込むことになるとは。
「アレハンドロ、本当にごめんね。私の個人的なゴタゴタに、巻き込んじゃって」 マルティナは謝った。
エレナはあっさり「別にいいじゃん。親友だもん。巻き込まない方がおかしいでしょ」
「エイミーのあんな傲慢で横柄な態度、マジでムカつく。自分をプリンセスだと思ってるけど、必要なのは医者でしょ! 」 エレナは叫んだ。「21世紀なんだから、プリンセスなんていらないんだよ。自分がそう思ってるだけなんだから。私がちょっと教えてあげただけ!」