第4章:本当に戻らないのか?
マルティナは、思わず眉をひそめて、次何すればいいか忘れちゃった。
**ベンジャミン・ウォーカー**って、あたしとビデオチャットとか絶対しない人じゃん。マジありえない。
ちょっとだけ迷ったけど、マルティナは電話に出た。で、ビデオは音声だけに切り替えた。
そしたら、低い、めちゃくちゃイケボの男の声が聞こえてきた。「どこにいるんだ?」
**ベンジャミン・ウォーカー**は、いつも簡潔に話すからね。マジで単刀直入。
今もそう。マルティナがなんで出て行こうとしてるのか、理由も聞かずに「どこにいるの?」って。
…もしかして、あたしが出ていく理由とか、全然気にしてない?
「外」ってマルティナは答えた。目はチラチラしてる。
「家に帰れ」って**ベンジャミン・ウォーカー**。
息も全然乱れてなくて、まるでマルティナが出ていくことなんて、大したことじゃないみたい。
何か言おうとしたマルティナを、**ベンジャミン・ウォーカー**は遮った。「最近仕事忙しいから、おとなしくしてろ」
マルティナが返事する前に、電話は切れちゃった。
マルティナは切れた電話を見て、最初はニヤリとしたけど、すぐに悲しそうな顔になった。
**ベンジャミン・ウォーカー**があたしのこと好きじゃないし、興味ないって、ずーっと前からわかってたけど、あんな風に軽く扱われるのは、やっぱりすっごく悲しい。
**ベンジャミン・ウォーカー**が18歳になってから、**ジャック・ウォーカー**は徐々に**ウォーカー**グループの全部を**ベンジャミン・ウォーカー**に任せるようになったんだよね。
**ベンジャミン・ウォーカー**は才能もあって、マジですごいんだよ。あいつらの仲間の中で、**ベンジャミン・ウォーカー**が一番だった。この6年間で、**ウォーカー**グループのビジネスを全部引き継いで、海外の市場にシフトしていったし。
**ベンジャミン・ウォーカー**がすごすぎて、マルティナのこと妬んでるやつ、いっぱいいたんだよね。マルティナがいなかったら、**ベンジャミン・ウォーカー**は**エイミー**とか、あいつら社交界の人たちにもてまくりだったろうし。**アダム**があたしにちょっかい出してきたのも、多分そういうことなんだろうな。
マルティナは**ベンジャミン・ウォーカー**に釣り合わないって思ってるやつ、多いんだよね。
片方はストリートアーティストで、片方はビジネス界のトップ! もし、あの頃の家の取り決めがなかったら、この2人が現実で交わることなんてなかったんだよ。
このこと、マルティナはここ数日でやっと気づいたんだ。
よく言うでしょ、無理やり実らせた果実は甘くないって。
マルティナの思考はちょっと遠くまで行って、涙が床にポタポタ落ちた。しゃがんで、涙を拭った。
次の日、マルティナはササッと朝ごはん作って、アトリエに行った。
大学卒業してから、**エレナ**と一緒にこのアトリエ始めたんだけど、マルティナはあんまり来なくて、いつも**エレナ**が色々やってたんだよね。
今日はマルティナ、珍しく早く来たし、ブラックコーヒーとパンまで持って来た。
このアトリエはそんなに大きくなくて、人数も10人くらいしかいないんだけど、ほとんどが新しい人で、マルティナのこと知らないんだよね。
入ったらすぐ、受付の人に「どちら様ですか?」って止められた。
マルティナは質問を聞くなり、近くのタイムカードにピッてやった。
ピッて音がして、画面にはこう表示された。「今月の出勤回数:0回」
マルティナの顔はちょっと赤くなって、自分がマジでダメなボスだって思った。
マルティナは直接、**エレナ**のところに行った。
**エレナ**が顔を上げてマルティナを見ると、すっごく驚いた顔で「え、マジで来たの?」って。
マルティナは用意した朝ごはんをテーブルに置いて言った。「今日から、ちゃんと仕事に来るよ」
**エレナ**は朝ごはんを手に取って食べ始めた。 **エレナ**の大好物ばっかり。「てかさ、なんでお金持ちの奥さんやめて、ここで働くことにしたの?」
マルティナは説明しないで、テーブルの上のデザイン案に視線を集中させた。
いくつかのデザインはもう形になってた。マルティナは上のデータを見て質問した。「これ、屋内で使う割合?」
**エレナ**は食べ物を置いて頷いた。「うん、アート展の内壁用だから、屋内用だと思うよ」 で、話題を変えた。「ホントに諦めて、あいつのこと追うのやめるの?」
マルティナは、頭も上げずに、長い間真剣に絵を見てて、ただ「うん」って答えた。
すぐに、**エレナ**は我慢できなくなって、マルティナの背中を思いっきり叩いて言った。「もう、ホント、うちの困ったちゃん。信じてないわけじゃないけどさ、いつも強がって言ってるけど、マジで全然ダメじゃん! **ベンジャミン・ウォーカー**から電話かかってきたら、絶対素直に帰るくせに!」
マルティナは遮った。「もう、かかってきた」
**エレナ**はびっくりした。「え、何?!」
「もう電話かかってきたけど、帰らなかった」ってマルティナは答えた。 **エレナ**の机からいくつか注文を取って、パソコンを開いて真剣に描き始めた。
**エレナ**はちょっと疑ってる。
正直、マルティナの絵の腕はマジで良いんだけど、ここ何年も仕事サボりまくってて、自分の才能無駄にしてるんだよね。
マルティナはアトリエに一日中いて、午後は無事、絵のラフ案を完成させて、**エレナ**に見せた。
**エレナ**は思わずため息をついた。「マルティナ、あんたはマジでうちの大学の首席だっただけのことはあるわ! 何年経っても!」