第110章:彼の目の中の宝物
ベッドでスヤスヤ眠ってるマルティナの顔を見て、しかめっ面もやっと緩んで、ベンジャミンはやっと落ち着いた。
ベンジャミンにとって、こんな気持ちは今までなかったんだ。マルティナがちょっとでも辛そうにすると、もう気が狂いそうになるんだから。
ベンジャミンの優しさはマルティナだけのもので、今はマルティナをずっとそばに置いておくことしか考えてない。
でも、サイモンが病室に入ってくると、ベンジャミンの視線はいつもの冷たい、感情のないものに戻った。まるで命令するロボットみたいに、「どうだ?」って冷たく聞いた。
ベンジャミンは、今日のことを裏で操ってるのが誰か、サイモンに調べてって言ってたんだ。
サイモンは言葉を濁した。「ボス…この件、ちょっと厄介かもしれません…」
ベンジャミンは無表情で彼を見た。「話せ」
サイモンは言った。「リックって言うんですけど、輸出会社の社長、ニック・ティンバーの息子です。うちとはずっと取引がある会社で…」
もしそれだけなら、大したことじゃない。いつでも契約切れるビジネスパートナーだし。ティンバー家がこの街で上手くやっていけるのも、ベンジャミンの言葉次第だしな。
ベンジャミンは、これで終わりじゃないって分かってた。サイモンの次の言葉を待った。
「でも、リックがこんなことした本当の理由は、エイミーです」サイモンはエイミーのこと、前は「ミズ・パロマ」って呼んでたのに、今はそんなことすらしない。どれだけ嫌いなのか、顔に出てる。
エイミーはもう体弱いのに。なんでまだこんなことするんだ?結果が怖くないのか?
それに、一番大事なのは、なんでマルティナさんを怒らせたんだ?マルティナさんがボスの目に入れても痛くない存在だって知らないのか?
マルティナさんが不機嫌ってことは、ボスも不機嫌ってことだ。ボスが不機嫌だと、会社中の誰にとってもヤバいことになる。
悪循環だ。エイミーは分かってないのか?それとも、前のことでもまだ足りないのか?
レスリーも変な風に責められてる。ロドリゲス家の別荘に行ったんだけど、マルティナに一時的に追い返されて。エレナがいれば大丈夫だろうと思って、車で待ってたんだ。待つことがこんなことになるなんて、思ってもみなかっただろうな。今、罰を受けてる。
サイモンが話し終わると、黙ってベンジャミンの次の指示を待った。
ボスが次になにをするのか、彼には分からない。リックを相手にするのは、多分簡単だろう。でも、パロマ家とボスの家はちょっとした繋がりがある。前の2世代はビジネスで良い関係だったし、友達みたいだったんだ。じゃないと、ボスがアダムみたいな2世を知ってるわけがない。
そもそも、二人は同じ道を進む人間じゃないはずなんだ。家族の関係があったから、接点ができただけなんだよ。
エイミーもパロマ家のプリンセスだ。もし本当に何かあったら、エリザベス夫人に説明するのは大変だろうな。
…
ベンジャミンはベッドで寝てるマルティナを見て、目がチカチカした。マルティナには、こんな思いをさせたくない。
だから、どんなに難しい状況でも、結局は自分で選択しなくちゃいけないんだ。
過去には、何もせずにマルティナをガッカリさせた。もし前と同じようにやってたら、マルティナを永遠に失うかもしれない。
罰を受けたレスリーは、足を引きずりながら病室の外で待ってた。
ベンジャミンとサイモンが出てくるのを見て、すぐに近づいて「ボス、説明させてください…」
ベンジャミンは、こんな言い訳みたいなのは好きじゃない。「言葉はいらない、マルティナを頼む」
この言葉から、レスリーは、ボスが仕方なく許してくれたんだって分かった。
一番大事なのは、マルティナさんが大きな怪我をしなかったことを感謝することだ。そうでなければ、こんな風に足を引きずるだけじゃ済まない。
だって、ベンジャミンのそばで10年以上も一緒にいるんだし、良い関係だったんだ。他の人だったら、絶対にベンジャミンのそばにはいられないだろうな。ギリギリだけど、特別ケースって言えるかもしれない。
レスリーは病室のガラス窓から中のマルティナを見て、めちゃくちゃ不安な気持ちになった。
本当に自分のせいだ。もし、ずっと車で待ってなかったら…
筋肉質な男なんて、彼にとってはただの雑魚なんだから。
サイモンの喧嘩の腕は、全部レスリーが教えたんだ。レスリーなら、筋肉質な男を片手でやっつけられるのに。
ベンジャミンとサイモンは去った。でも、ベンジャミンはマルティナに何かあったら嫌だってことで、何人か病院に残すように手配したんだ。
その時、ベンジャミンはもうパロマ家に向かってる途中だった。
今日はパロマ家の恒例の家族集まりの日。パロマ家のメンバーはほぼ全員、この日に早く来る。もし遅れても、お昼ご飯の前には来るんだ。
だって、アダムのおじいちゃん、ゲイリー・パロマがまだ生きてるから、彼を怒らせたくなかったら、そうするしかないんだ。
ここ数年、それがルールになってるんだ。
ベンジャミンは、過去に何度かパロマ家に行ったことがあるけど、毎回急いで来て、急いで帰ってた。
パロマ家の別荘の入り口で車が止まると、ベンジャミンは何も言わずに、顔の半分を見せただけで、門番は彼を通した。
パロマ家は、景色が綺麗で、広い場所に住んでる。
でも、パロマ家のメンバー全員が普段から一緒に住んでるわけじゃない。どっちかって言うと、順番で当番みたいな感じで、不定期に人が出入りしてるんだ。
エイミーがここに住んでるのは、環境が良いからで、彼女の健康に一番合ってるからなんだ。
ゲイリーは孫娘を溺愛してて、小さい頃から宝物みたいに扱ってるんだ。ゲイリーにとって、孫娘は大切な宝石で、彼女の幸せのために何でもするんだ。
エイミーは今、自分の寝室で、鏡の前でメイクしてもらってる。
一見すると、昔のお嬢様みたいな雰囲気もあるんだけど、洗練さとか輝きが足りないんだよな。
専属のメイクアップアーティストが、一生懸命メイクをしてて、たまに修正したいところがないか聞いてる。
もしこれが前だったら、エイミーは絶対に色んなとこに文句をつけて、ちょっとした欠点をわざと探してたはずだ。でも今回は、明らかに上の空で、文句をつけることすらしてない。
彼女は窓の外を見て、昨日の夜のことについて、誰かから真相を聞いたんだ。
確かに、リックの図々しさには感心するよな。ロドリゲス家であんなことするなんて。でも正直、エイミーは密かに、昨夜リックが雇った人達が成功してほしいって思ってたんだ。まさか、ベンジャミンが助けに来るとは思わなかっただろうけど。
でも、彼女が一番心配してるのは、この件で自分が巻き込まれる可能性があることなんだ。
彼女は慎重に考えてみた。最初から今まで、自分が罪になるようなことは何も言ってないし、やってない。たとえベンジャミンがどんなに凄腕でも、彼女に不利になるような証拠を見つける方法はないはずだよね?
そう、きっとそうに違いない!