第12章:来たのは彼だった
今まで生きてきて、この状況ほど不安で落ち着かないって思ったこと、一度もなかったんだよね、**ベンジャミン・ウォーカー**は。もうずいぶん時間経ってるのに、まだ**マルティナ・マルティネス**の姿は見えないし。
会いたいってのは、もう間違いないんだけどさ。
唯一分かってるのは、**マルティナ**が**ロドリゲス**家の女の人と結構仲良いってこと。もし見つけられないなら、**ロドリゲス**家が突破口になるかもしれない。
**サイモン・リー**はめっちゃくちゃ焦ってて、息するのもやっとって感じ。それで、捜査に協力することになったんだよね。
別に**サイモン**のせいじゃないし。翼が生えて、いつも**マルティナ**の後を追いかけるわけにもいかないしね。
ちょうどその時、**アダム・パロマ**から電話がかかってきて、何かいい知らせがあるみたいだった。
「**ベンジャミン**、ちょっといい知らせがあるんだけど、聞きたい?」**アダム**が聞いてきた。
**ベンジャミン**は考えもせずにすぐさま「時間ねえ」って断った。
**アダム**は話すのが得意じゃないから、**ベンジャミン**は今、**マルティナ**が何してるのかを知りたい気持ちの方が強かったんだよね。
でも次の瞬間、**アダム**はまるで独り言のように話し出した。「ま、**ベンジャミン**はつまんないやつだし。これから話すことは、前にお前にベタベタしてた女のことなんだけどさ」
それを聞いて、**ベンジャミン**は呼吸が乱れた。「話せ」って、一言だけ言った。
たった一言で**アダム**は全身に鳥肌が立っただろうけど、それでも正直に言った。「言っとくけど、お前と別れてから、**マルティネス**はマジでどん底だって。今日なんて、ナイトクラブで警察に連行されて、犯罪容疑者扱いされてるらしいぜ」
**アダム**は興奮して話してて、眉毛も上げて目もキラキラさせて、すごく嬉しそう。「今も警察署にいるんだけどよ。誰か保釈してやらないと、数日拘束されるかもな!」
「でも、あんな感じになったのは、よかったと思うけどね。あいつ、前はお前にめっちゃまとわりついてたから、自業自得だよ」って続けた。
でも、この時の**ベンジャミン**は、もう全く落ち着いてなかった。
何も言わずに、**ベンジャミン**は電話を切って、すぐにコートを手に取って、**サイモン**に目で合図して「警察署に行こう!」って言ったんだ。
**サイモン**もバカじゃないから、この瞬間、**マルティナ**は**ボス**の前にいる時よりも、ずっと大事な存在だったんだって気づいたんだよ!
じゃなきゃ、**マルティナ**が警察にいるって聞いて、あんなに焦るはずないもんね?
顔の表情はあまり変わってないけど、周りに漂う冷たさで、全てが分かった。
昔は、**マルティナ**ってのは、まるで小さいお尻みたいにいつも**ベンジャミン**の後を追いかけてて、**ベンジャミン**が不機嫌な時でも、離れようとしなかったのに。
でも今は、この女は何度も電話に出ないし、挙句の果てには警察に連れて行かれた。一体何がしたいんだ?
**ベンジャミン**の背が高くてスッとした姿が、急ぎ足でドアに向かっていった。
過去のことを考えると、心に沈む気持ちはさらに強くなった。
会って全部説明してくれればいいのに。
**執事**は全部見てて、すぐに**エリザベス・ウォーカー**に報告した。
**マルティナ**みたいな身分の人が、**ベンジャミン・ウォーカー**にこんなによくしてもらってるのが気入らなかったんだろうね。今度は**マルティナ**が警察に連れて行かれたから、図々しさも限界知らずだって思ってる。
**マルティナ**がどこにいるか分かったから、**ベンジャミン**は調査しやすくなって、徹底的に調べて真実を突き止めた。
**マルティナ**をナイトクラブに誘ったのは**エレナ・ロドリゲス**だったんだよね。そこで、違法なビジネスとか、性犯罪の可能性とかで捜査に巻き込まれてしまったんだ。
運悪く、チャラい男のストリッパーっていう危険な男と一緒のナイトクラブにいて、二人とも事情聴取のために警察署に連れて行かれたんだ。
その後、身分証明書を持ってなかったから、一時的に拘束されて、出られなくなってたんだよね。
すごく恥ずかしい状況で、**アダム**の口から出た言葉を聞いた時は特にそうだった。
**アダム**は、自分が何か手柄を立てたみたいな口ぶりで話してたけど、まさかその言葉が**マルティナ**を助けることになるとは思ってもなかっただろうね。
もし事前に分かってたら、あんな電話はしなかっただろうな。
警察署で、**マルティナ**は自分がどれくらい待ってたのか、全然分からなかった。たぶん、1時間か2時間くらいかな。
ラウンジはエアコンが効いてたんだけど、服が薄着すぎたから、今では全身鳥肌が立ってた。
もう限界だって感じ始めた時、ドアの外から警察官の声が聞こえた。「**マルティナ・マルティネス**さん、保護者が迎えに来ました。もう出られますよ」
**マルティナ**は一瞬びっくりしたけど、たぶん**エレナ**が迎えに来てくれたんだろうと思った。
深く考えずに、痛むふくらはぎをさすって、やっとのことで立ち上がった。
でも**マルティナ**は予想してなかったんだ。ラウンジを出たら、警察署のロビーで、何ヶ月も会ってなかった人に会うことになるとは。
それは、**ベンジャミン・ウォーカー**だった。
この一瞥は、まるで永遠の昔のことみたいだった。
いつだって、**ベンジャミン**はエレガントで並外れた品格を醸し出してる。彼のハンサムな顔には、疑いようのない怒りの感情が隠されてた。
実際、**ベンジャミン**がどうやって自分が警察署にいるって知ったのかは分からなかったけど、自分のために深夜に休む時間を犠牲にして、こんなところまで迎えに来てくれたのは、怒るだけの価値はあったんだよね。
**マルティナ**の顔の表情はちょっと硬くて、目は少し赤くて協力的じゃなかった。
どんなことがあっても心を揺るがさないって決めてたけど、6年間も愛してきた人の姿を見たら、心は少しだけ揺らいじゃったんだよね。
**マルティナ**は自分の手のひらに鋭い爪を深く突き刺して、やっと現実に戻ることができた。
絶対に戻っちゃダメだって、自分に言い聞かせた。そうでなければ、おしまいだって。
もう笑いものにはなりたくなかったんだ。
**マルティナ**の姿を見て、**ベンジャミン**の周りの冷たさはさらに強くなって、顔の怒りも倍増したみたいだった。
よくやったね、**マルティナ**!**ベンジャミン**は何日もいなくて、外にいたのに、密かにナイトクラブに行って、しかもここで警察に捕まっちゃったんだから。
**ベンジャミン**は**マルティナ**の身元と年齢を確認するために、**マルティナ**の身分証明書のコピーを持ってきてくれたから、スムーズに釈放されたんだ。
車の中で、**ベンジャミン**と**マルティナ**は後部座席の反対側に座った。
**ベンジャミン**は初めてすごくイライラしたんだ。なんで自分の車のスペースはこんなに広くて、自分と**マルティナ**の距離はこんなに離れてるんだ?
大きな手が革張りのシートを軽く叩いてて、その表情には紛れもない激しさがあった。
あの別れの電話をして、**ベンジャミン**の隣で電話を切られて以来、二人はもう連絡を取ってなかったんだ。何があったのか話す機会すらなかったのに。
今では、まるでずいぶん前のことみたい。
なのに、また**ベンジャミン**に警察署から連れて行かれて、また彼の前で恥をかいてしまったんだ。
まるで他の人が言ってたことを証明してるみたいだけど、**マルティナ**は諦めるつもりはない!
**マルティナ**は歯を食いしばって、窓の外を見た。もう午前2時だった。道にはあまり人がいなかったけど、車のエアコンのせいで、**マルティナ**はまた自分を抱きしめた。
この小さな行動は、当然**ベンジャミン**の目に留まった。
次の瞬間、**ベンジャミン**は自分のジャケットを**マルティナ**にかけたんだ。
**マルティナ**はびっくりしたけど、体に冗談を言うのは嫌で、それを着た。それから、優しく「ありがとう」って言ったんだ。