第295話 言葉のない言葉
お昼前くらいに、ある大物インフルエンサーがこっそりマイクロブログで話題をさらったんだよね。
「どうしてこうなったのか、マジで意味わかんない。全部話まとまって、骨髄提供の同意書にもサインしたのに。いざ手術って時に、ドタキャンとか裏切りとかありえる? [泣き顔]」
写真には、骨髄提供の同意書へのサインが写ってて、めっちゃ雑なんだけど、それでも「温清夜」って名前は判別できる。
温清夜のファンたちが、一番最初にこのWeiboに気づいたんだよね。
事情を理解した途端、みんな辛くなっちゃって。
「南南、やっと適合する骨髄見つかったのに、まさかのドタキャン。温清夜、マジでクズじゃん!」
「うう…かわいそうな南南、いつになったら世界は優しくしてくれるんだろ…」
誰かがすぐに温清夜の身元を掘り下げてさ。「え、マジかよ、価値観変わるわ!こいつ、うちの県のトップ合格者じゃん?!まさかこんな奴だったとは、はぁ…」
方若南は、このコメント見て、めっちゃ得意げにスマホを突き出したんだ。「ママ、見てよ、ちょっと金出して話題買っとけばいいんだよ。ローラは評判気になるから、絶対ウチらに交渉してくるって。」
舒菜は、緊張してた顔が少し緩んで、やっと笑ったんだ。「…マジ? 娘、頭いいね! ママ、なんで思いつかなかったんだろ…」
方若南はますます鼻高々。「次は、向こうから連絡してくるのを待つだけ。」
「トップ合格者がドタキャン」ってワードはどんどんヒートアップ。
ネット民の多くが、道徳的な正義感を振りかざして、温清夜の恥知らずな行為を非難しまくってる。
「まじで、『成績優秀』と『性格が良い』は全然違うんだな。ほら、生きた見本でしょ?」
「温清夜って、帝都大学行くらしいじゃん?あんな学生、帝都大学が取るのかよ?それって、大学の看板に泥塗ってない?」
「ほんとそれ。」
仕事中のボブは、この話題をたまたま見て、ちょっと眉間にシワ寄せたんだ。
そしたら、ローラはボブから突然SMSを受け取った。「ネットの件、俺が片付ける。」
ローラはポカーン。ネットって、何のこと?
嫌な予感が胸の奥底から込み上げてきてさ。Weibo開いたら、すぐに事の顛末が分かって、顔色悪くなっちゃった。
「ありがとう、でも大丈夫。あと、彼はノッティング大学に合格したの。」
ローラの言外の意味は、あのネット民がそんなこと言ってるのは、真実を知らないからだってこと。
ボブは返信を受け取ったけど、無視して、温清夜の電話にかけ続けたんだ。「もしもし? 温清夜さん?」
温清夜は、その声を聞いて、声が緊張してて、すごく警戒してる感じだった。「あなたは…?」
ボブは笑った。「俺は、盛盛の兄だよ。」
温清夜は、間延びした「あー」って声出して、「盛盛姉をほったらかしにして、一人ぼっちにした兄ね。」
ボブは顔が強張り、話を無理やり変えた。「ネットの言葉とか、気にすんなって。騒ぎたいだけの人たちが騒いでるだけだし…」
温清夜は気にしてない様子。「俺の状況は、お前らに慰めてもらうほど悪くねえよ。」
ボブは、何を言えばいいのか分からなくなっちゃって、結局何も言えなくなって黙っちゃった。
電話の向こう側は静かだった。温清夜は我慢強く30秒くらい待ってから、「他に何か用? 用事なかったら切るけど。」って言ったんだ。