第37章 決して許さない
「これ、ハメる高度なテクニック? ちょー上手じゃん。役者とかやれば? オスカー獲れないのがもったいないわ」
リリーは弱いフリするのは慣れてたけど、こんなに直接的に攻撃してくるやつは初めてだった。一瞬、言葉が出てこなくて、顔を真っ赤にして「あ、あの、その…あたし、その…」
「なに? さっきまでペラペラ喋ってたのに、なんで一言も言えないの?」 ルーシーはどんどん口調が早くなる。「裏表あるやつ、大嫌い」
「あたし…」
みんな、ルーシーにマジでビックリしてんの。あんな風に誰かを責めるの、見たことないもん。誰だって耐えられないでしょ?
リリーは普段から人を罵ったりしないし、ましてやルーシーに逆らうとか考えられない。みんなに見られて、めっちゃ恥ずかしくて、頬がカーッって熱くなる。
「あたし…あたし…」ついにリリーの目からポロポロ涙がこぼれ始めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、全部あたしのせいなの、ごめんなさい…」すすり泣きながら、袖で真っ赤な目を覆って、ドアを掴んだ。
「リリー!」
「リリー!」
一緒にいた友達たちが、みんなでリリーの名前を呼んで、引き留めようと数歩追いかけたけど、リリーはあっという間にドアの向こうに消えちゃった。
「ちょっと、あんたたち…」リーダー格のジョイは、追いかけるのを諦めて、振り返って隅っこにいる2人を見た。一緒に文句言ってやろうと思ったけど、ルーシーの顔を見て、言葉を変えた。「ローラ、リリーを泣かせたこと、許さないから!」そう言って、みんなで出て行っちゃって、教室は一瞬で静かになった。
「ローラ、その…」ルーシーは、さっきあんなに喋ってたローラのこと見て、急に言葉に詰まっちゃった。「ごめん! あいつら、あたしには逆らえないから、全部あんたのせいにして…」
ローラの袖を掴んで、申し訳なさそうに「ごめんね」って言った。それから、「でも、心配しないで、あたしがあいつらにいじめさせたりしないから!」って付け加えた。
ローラはなんだかあったかくなって、優しく微笑んだ。ルーシーの頭を撫でて、穏やかに笑って「大丈夫。怖くないよ」
…
8組は評判悪いけど、学校で勉強を完全に無視するわけにはいかない。
チャイムが鳴って、2時間目はスペイン語。ポニーテールで、キッチリした格好の先生が教科書を持って入ってきた。若い顔に、キラキラした笑顔。「生徒たち、今日は新しいレッスンよ。教科書の…」
隅っこにいるローラに気づいて、先生は興奮した。
「わあ、新しい生徒さんが来たのね! 知らなかったわ。新しい人、名前は?」