第111章
教授が教室に入ってきて、もうすでに何人かの生徒が教室に入ってて、自己紹介はスムーズに進んだ。その教授は男性で、たぶん40代半ばくらいかな。白髪が混じった髪で、鼻の上に眼鏡をかけてて、細いェーンが繋がってて、それが首の後ろをぐるっと回ってた。
自分が持ってきた小物を自分の席に置いてから、黒板用のマーカーを取り出して、自分の名前かなって思った「ウォルター教授」って書き始めたんだ。
教授は、必要なものを見つける場所とか、授業の進め方とか、試験の日程とか、成績の付け方とか、色々教えてくれた。時間に追われてる先生って感じじゃなくて、1年を乗り切るために役立つことを、ゆっくりと教えてくれるんだ。たまにジョークを言ったりして、その瞬間から、この教授のこと好きだなって思った。気さくだけど、大事なことはちゃんと教えてくれるし、退屈じゃないんだよね。
「今日は授業を始めないから、自由に見て回ってて。クラブとかサークルを紹介するブースも出てるから、興味のあるものがあったら参加してみてね!楽しんで!」って笑顔で言った。
スマホで時間を見たら、まだ授業時間の半分しか使ってなかった。ってことは、ストリートファイトの試合のベースキャンプに行って、スケジュールを確認する時間があるってことだ。もうレヴィから連絡が来ないから、自分の試合のことは自分で把握しとかないと。
時間があるから、キャンパスをぶらついて、ブースを見て回ることにした。別にどれにも入るつもりはないけど、試合で時間取られちゃうし。
大学にいる生徒たちを見てたら、いつか自分の人生も、こんなにめちゃくちゃじゃなくなればいいのにって思った。少しは普通の生活を送れるようになればいいな。自分の人生で唯一普通なのは両親だけど、自分がストリートファイトしてること知らないし。アダムとか、ドムとか、レヴィとか、狂った兄貴のこととか、全然知らないんだよ。
でも、良いこともあって、少なくともソニアとは縁が切れたし。たぶんマディソンも前ほど意地悪じゃなくなったし、もう人に押し付けられることもなくなったし。問題は、自分の怒りのコントロールをどうにかして、人にキレたりしないようにしないと。ペネロペとジェイクとモニクに会いたいな。ペネロペは隣町にある大学に合格して、そこまで車で1時間くらいだし。ジェイクとモニクはまだ高校生だけど、相変わらず仲良さそうだし。
考えを振り払って、グラウンドに行こうとしたら、全然難しくなかった。みんな同じ方向に向かって歩いてるから、それに従ってればいいだけ。
高校の時より、ずっとここに馴染みやすい気がする。たぶん、誰も自分の兄貴のこと知らないからかな。もし誰かが、クラスメイトが自分にしたみたいに、人を脅かしたりしたら、すぐに追い出されるだろうし。大学は、良い第一印象だった。落ち着いた生活、カオスから離れた場所。
グラウンドには、学生たちが運営してるクラブのブースがずらっと並んでた。合唱部、手芸部、ダンス部、ITオタク、読書クラブ、ダイビング部、環境保護団体とか。
歩き回って、それぞれのブースの前で、新しいメンバーを勧誘するために、チラシを配ったり、大声で呼びかけてる人たちを見てた。みんな笑顔で、周りを見回してる人もいれば、立ち止まって観察してる人もいて、入会してる人もいる。
そろそろ行こうかなって思った時、誰かに肩を叩かれた。チラシを持ってて、武道系のクラブの前に立ってたんだ。その人は小柄で、そういうクラブのメンバーだってことに、正直驚いた。ああいう体格の女の子がリングで戦ってるのは見たことあるけど、それにしても、その姿は華奢だった。
その人に眉を上げて、「何か用?」
「はい、メーガンです。このクラブの者です」って、自分の後ろのブースを指差した。
「ああ、気づいてたよ」って、彼女の手にあるチラシをじっと見て答えた。彼女は顔を真っ赤にしてたから、笑ってあげた。
「クラブでスパーリングする時、男子は大変じゃない?女の子は特別扱いされたり、男子に比べて軽く見られたりしない?」って聞いてみた。
メーガンは少し微笑んで首を振った。「クラブでは結構オープンで、性別によって役立つことを教えてもらうんだ。男子は、どこを打てば一番痛いかとか教えてくれるし、私たちは汚い手に対するカウンターとかを教えてもらう。ただ、男子と女子のスパーリングは、あんまり混ぜないけどね」
ちょっと不安そうな顔をしてたのかな、彼女は続けた。
「チラシをあげるね、すぐに登録しなくてもいいから、考えてみて。連絡先も書いてあるから、何か質問があったり、気が変わったら連絡してね」ってチラシを渡して、笑った。
お礼を言って、すぐにその場を離れた。気まずくなるような人間関係は嫌いなんだよね、だって、気まずいし、居心地悪いから。
もうそろそろ、試合のベースキャンプに行って、試合のスケジュールをもらってこようって決めた。自分の車に戻って、運転席に座って、チラシをじっと見てた。
スパーリングの写真とか、練習するジムの写真が載ってた。
チラシをダッシュボードに挟んで、エンジンをかけた。
まだ色々抱えすぎてるから、あんなクラブに入ってる余裕はないかな。ストリートファイトの世界から抜け出せるようになったら、考えよう。
そう思って、キャンパスを出て、家に帰って、自転車を取りに行ったんだ。