第12章
車がぐるぐる回るのがわかった。金属がコンクリートに擦れるキキーッ!って音が耳をつんざいて、車がひっくり返って、シートベルトに抱きしめられるように投げ出された。全部止まって、夜は静寂に包まれたけど、問題はさ、とんでもない重さが俺の上に乗っかってて、逆さまになってるんだよね。
なんか濡れたものが頭の横を伝ってきて、頭がズキズキする。まぶたが重くて仕方ないんだけど、寝ちゃいけないって感じがしてならない。
目の前に見える顔を見て、喉がカラカラになった。お腹の底にドーンと不安が沈んで、パニックが全身を駆け巡る。
かすかに、兄の声が聞こえた。「パニック野郎は死ぬぞ」って。でも、俺をハイパーベンチレーションにさせてるのはアンタなのに、落ち着けなんて言ってないじゃん!
「や、やだ!ダメ、ダメ、ダメ!ブライ?ブライ?!やだ、こんなのありえないよ。ブライ?!起きて、お願い、起きてよ!」って、懇願したけど、どれだけやっても、彼は目を開けない。
いつものニヤリとした顔で「バーン!」って囁く瞬間を待ってた。でも、それは永遠に来なかった。
とめどなく嗚咽して、声が枯れるまで叫んだ。でも、何も感じない。残りの力全部使って叫び続けた。誰かに聞こえるように。涙がこぼれて、悲しみが全身を満たして、希望が俺のコアから飛び出して行った。
「助けて!誰か助けて!お願い!助けて!誰か助けて!」って、もがいて、隙間を見つけようとした、何かを掴もうとした。
パニックの中でむせ始めて、全身が震えて、叫びを抑えようとした。
脳みそは全然協力してくれなくて、兄が生きてるかどうかに気を取られてた。
「ブライ?!しっかり!俺を置いて行かないで!ブライ…」
目を開いて、飛び起きて座った。全身が震えてる。「夢だ、夢なんだ」って呪文のように唱えたけど、全然効果なくて、丸まって膝に顔を埋めて泣いた。夢だって言い聞かせようとしたけど、本当は、俺の良心はそれ以上だって知ってて、自分の神経を落ち着かせるために自分に言い聞かせてる嘘を拒否したんだ。
背中に手が置かれて、優しく擦られ始めて、ビクッとした。顔を上げると、モニクが悲しげな笑顔で俺を見てた。周りを見たら、みんな困惑してて心配そうな顔してる。
乱暴に目をこすった。泣いてるのを見られたのが嫌だった。「ごめん、起こしちゃった?」って、喉のつっかえを何とかしたくて、咳払いした。どれだけ弱々しく聞こえるかが嫌だった。まだ喉はカラカラで、誰かが水を持ってきてくれた。ありがたく受け取った。
みんなが心配してくれた後、やっとあれはただの悪夢だったって納得してもらった。
でも、モニクは全然違った。俺の言葉を鵜呑みにはしないだろうけど、俺がみっともない姿を誰にも見せたくないってことも知ってる。弱くて、嫌なんだ。
彼女は、みんなに納得してもらうのを手伝ってくれて、しばらく一緒にいてくれるって言ってくれた。
彼女は悪夢のこと知ってたんだ。彼女が別の州に引っ越して、新しい生活を始めることにした1ヶ月前にもあった。俺もその気持ちがわかるから、責められないよ。全てを置いて行きたくて、追ってこないように願って、捕まらないように祈る気持ち。それはどんな気持ちか知ってる。
でも、それは決してなかった。ありえないんだ。過去から逃げることなんてできない。どれだけ先に逃げても、いつも追いついてくる。できる最善のことは、それに立ち向かうか、我慢することだけ。
モニクが俺を見て、彼女の目に涙が溜まってるのがわかった。俺も喉が詰まりそうになった。
ダメだ、強くならないと。モニクには俺が強くいてあげないと。強くならないと。唱えたら、まるで呪文みたいだった。嗚咽はどこからともなく引っ込んで、俺は黙ってモニクの背中を優しくさすった。
「大丈夫、ケース。寂しいんでしょ。出しちゃいなよ。溜め込んじゃダメ、辛くなるから」って、モニクが耳元で囁いた。彼女の声の奥には、彼女にしか得られない安らぎがあった。彼女はブライアントにとって、俺と同じくらい妹だった。ブライアントは俺を愛するのと同じくらい彼女を愛してたし、家族なんだ。
ブライアントの死は彼女にも俺と同じくらい影響を与えたから、俺を理解できる人がいるとしたらモニクしかいない。俺がどんな悲しみと苦しみと罪悪感を抱えてるか彼女は知ってる。彼女はそこにいなかったから、悪夢を見ないけど、彼女がブライアントを愛してるのは知ってる。
彼女の言葉は、俺の感じてた悲しみを呼び起こして、今度は、感情を解放したんだ。
俺の頭を抱きしめて、彼女のパジャマに顔をうずめて泣き崩れた。事故の後の様子が頭の中にフラッシュバックする。
「最低な人間だよ、モ。自分勝手すぎた。もし家にいたら、ブライアントはまだここにいて、あなたとドムもいなくならなくて、全部…」って、息を整えるために言葉を止めて、しゃっくりが出て、胸が不規則に上下して、嗚咽で息を詰まらせながら。「全部完璧だったのに。ブライアントはアダムに少しでも触られたらあいつの頭を噛みちぎってたし、俺はまだ兄がいて、怖いお兄ちゃんもいたのに。全部俺のせい、モ。全部俺のせいなんだ。ごめんなさい。」
ブライアントをモニクの人生から奪って、ドムの人生から奪って、何よりもマディソンの人生から奪ってしまった。今の彼女がこうなったのは、全部俺のせいなんだ。もし家にいて、みんなにからかわれたのを無視してたら、ブライアントが慰めてくれてたはずなのに。いや、ブライアントは慰める必要もなかったんだ。悲しむ人なんていなかったんだから。
俺は、あのパーティーで皆に溶け込みたかった。そして、夜中にやったパーティーで溶け込んだけど、その数時間後には、俺が一番大好きな兄を失うことになった。
フェアじゃなかった。人生はフェアじゃない。俺はただの女の子だった。若くて、純粋で、人生の残酷さに全然気づいてなかった。その無知が俺から奪われて、俺をこんな姿に変えたんだ。壊れた女の子、兄の温かいハグとキスをもう一度感じたいと願ってる。彼が俺を正気にしてたんだ。
俺は16歳で、人生は俺に何を与えた?兄の死。何年も俺を大切にしてくれた唯一の人の死。俺が弱くて自分で立てない時に助けてくれて、誰よりも最高のハグをくれた人の死。
でも、それが人生なんだ。準備ができてるかどうかなんて関係ない。シャークの海に投げ込まれるんだ。そこで何が起こるかわからない。サメが皮膚を噛むかもしれないし、無視して通り過ぎるかもしれないし、全部食べられちゃうかもしれない。
「違うよ、ケース。あなたのせいじゃない。あなたのせいじゃないの。自分を責めさせるわけにはいかない。あなたのせいじゃない。」って、彼女の言葉を聞いて泣いた。彼女は俺を責めなかったかもしれないけど、俺の頑固さのせいで、兄が俺の後始末をしなきゃいけなくなって、命を落とすことになったんだ。
俺は返事をせずに、ただそこにいて、彼女がくれる慰めを受け入れて、涙が止まらないようにした。
やがて、涙は止まって、自分自身が遠ざかっていくのが感じられて、感覚が鈍くなって、まぶたが垂れ下がって、一秒ごとに重くなっていくのがわかった。
モニクは気づいたみたいで、ブライアントの古いベッドに俺を寝かせて、毛布をかけてくれた。俺は目を閉じたまま、彼女のベッドに移動して、シーツに包まれる彼女の姿をぼんやりと見ることができた。彼女は俺の方に背を向けていて、また涙が左目からこぼれて、俺はまぶたを下ろして、暗闇を受け入れた。
一番悲しいのは、ブライアントが永遠に去ってしまったという事実を受け入れたとき、俺たちが作った思い出が足りなかったってことに気づいたこと。今やっと気づいたけど、もう遅くて、彼との思い出だけで、俺の心の隙間を埋めなきゃいけないんだ。
「愛してるよ、ブライアント。いつも心の中にいるよ」ってのが、眠りに落ちる直前に頭に浮かんだ最後の考えだった。