第94章
これまでのこと全部、彼に話しながら、指をいじってた。
こんなの初めてでさ、前はこんなことなかったけど、多分、彼が近づくやつみんなビビらせてたからだろうね。彼だって、こんなことになるとは思わなかっただろうし、俺のことでもビビってたのかもしれないし。
俺もビックリだったんだよ。
まさか、家族だと思ってた奴が、俺にこんな気持ちを抱くなんて、思ってもみなかったから。
その場の勢いってこともありえるけど、100%そうだって言い切れるわけじゃないし。
「俺のこと好きだって言ってきてさ、兄弟以上の意味だってハッキリ言われたんだ」って、俺はイライラしながら言った。
ブライアントはそれに眉をひそめた。
俺らの家族はいつも仲良しだったんだ。
だから、ドムがあんな風に突然告白してきたのは、マジで衝撃的だった。
俺があんな風に誰かを好きになったことないってことも、他の奴に全然興味ないってことも、彼は知ってたのに。
「大丈夫、俺が何とかするから」って、ブライアントは慰めてくれた。
その言葉が出た瞬間、顔から血の気が引いていくのが分かって、俺はすぐに彼の方を見た。
ブライアントのことよく知ってる奴なら分かるけど、必要だって感じたら、彼は躊躇なく暴力も使うんだ。
俺は、ただのくだらない恋心で友達を失うなんて、マジで嫌なんだ。
家族みたいなもんなのに、そんなことで友達失うなんて、一番バカげてるだろ。
「ブライ、バカなことしないでって約束して。
何があっても、彼は家族なんだから」って、俺は兄に懇願した。
誰にも傷ついて欲しくないんだ。
ドムが恋人だって考えはマジでゾッとするけど、友達が傷つくのも嫌なんだよ。
例え、彼らがマジでアホなことしてても。
彼は俺に首を振った。
「大丈夫、傷つけたりしないよ、妹。
話をするだけだって約束する」
彼の顔を見て、俺はため息をついた。
多分、彼の言葉を信じるしかないんだろうな。
もし、彼がドムを殴りに行ったら、俺には止めようがないし。
あいつ、俺の倍、いや、3倍くらいデカいんだし。
「なんで俺のこと好きなのか、マジで分かんない。
俺なんて別に何でもないし、ただの普通のケイシーだし。
学校のあいつらみたいな可愛さもないし、魅力もないし、なんで俺なんだろう?」って、俺は小さく呟いた。
別に大声で言ったつもりはなかったんだけど、多分、隠しきれてなかったみたいで、次の瞬間には、ブライアントは俺の前にひざまずいて、説教顔で俺を見てた。
彼は、コーヒーテーブルとソファの間の狭いスペースに体を押し込んでいた。
「おい、美しさとか、人について、俺が何て言ったか覚えてる?」
彼は真剣な顔でそう聞いてきた。
多分、同じことばっかり聞かされて、うんざりしてるんだろうな。
俺は彼の視線を避けた。
同じこと何回も聞かせて、彼にまた同じ説教をさせちゃって、悪いなって思ったんだ。
「美しさは内面にある」って、俺は彼が言い出す前に始めた。
「心があるところ」って、彼は俺のために言い終わって、優しく微笑んだ。
そして、俺の心臓があるあたりに、指を2本置いてた。
この一年間、毎日毎日これを言われてて、俺は彼に洗脳されてるんじゃないかって疑い始めてた。
でも、正直言って、俺たちはみんな人間だし、心の美しさが外見に影響するってことを忘れがちになるもんだ。
ただ、美しさは見た目じゃないってことを思い出させてくれる人が必要なだけで、ブライアントは俺にとって、そういう人なんだ。
彼がいなかったら、どうなってたか想像もできない。
彼は俺の支えなんだ。
「でも、俺にも、そういうのあるのかな?
マジでさ、学校のあいつらのこと、殺したいとか、復讐したいとか思ってるんだよ。
俺にも、内面の美しさとか、あるのかな?」
その時、俺の目には涙が溜まってて、もう溢れそうだった。
ブライアントが一緒にいるときは、感情を抑えるってことは、俺にはなかったんだ。
彼は言葉を選んでるのが分かった。
俺が不安定な状態だって分かってるんだ。
「そういう考えになるのは、お前が人間だからだ。
俺たちはみんなそうなんだよ。
誰でも悪魔はいるけど、それに従うか、戦うかは自分次第なんだ。
そして、妹よ、お前は最強のファイターで、今まで会った中で一番美しい女の子だよ」
彼はものすごく真剣にそう言って、俺の目から何粒か涙がこぼれた。
俺は手を伸ばして、彼を抱きしめた。
神様、俺にこんな素晴らしい兄をくれて、どんな良いことしたんだ?
もし、誰かが時間を巻き戻せるなら、一番最初にすることを知りたいよ。
彼は俺の額に唇を押し当てて、慰めの言葉を囁き続けた。
「お前は、世界がお前にどんなに酷いことをしても、毎日笑顔で過ごしてる。
その笑顔が、内面の美しさを表してるんだ。
お前は、犯罪者予備軍みたいな奴らでも、助けることができるんだ」
俺は眉をひそめた。
「おい、俺はそんなにバカじゃないよ!」
俺は彼を軽く叩いた。
「妹の心が、どれだけ純粋かは分からないけど、とにかくデカい心を持ってるってことは知ってる。
俺たちが大人になったら、お前の顔が写ってる看板とか見て、街中を狂ったように走り回って、『俺の妹だ!』って自慢すると思うよ」
ブライアントはそう言い続けて、最後には、また俺の目に涙が溜まってきた。
『バカなケイシー。
泣かないぞ。
泣かないんだ。』
って心の中で唱えながら、少しだけ鼻をすすった。
ブライアントは笑って、俺にハグしながら首を振った。
俺は、彼が今言ったことを想像して、震えるような笑い声をあげた。
俺が幸せになるなら、彼はマジでやるだろうって知ってた。
心の底では、彼は俺のためなら何でもするって分かってた。
彼は、俺がいなかったら生きていけないような、最高の兄貴だったんだ。
俺は、背中からいくつか音が聞こえるくらい、急にベッドから飛び起きた。
もう顔は涙で濡れてて、自分の手しか見れなかった。
あんな日の夢を見るなんて、思ってもみなかった。
俺の夢はいつも、あの事故のことばっかりで、刑務所の中にいるような気持ちで目が覚めるんだ。
でも、さっきの夢だって、別に良いもんじゃなかった。
兄が俺をどれだけ大切にしてくれたか、思い出したら、ノスタルジーが押し寄せてきて、また新しい涙が溢れてきそうだった。
誰かがこんなに俺を愛してくれてたのに、俺はそれを失ったんだ。
意地を張りすぎたせいで、マジでクソみたいなパーティーに行きたがったせいで、価値もないパーティーに。
あの日みたいに、最後にハグすることさえできなかったんだ。
どれだけ彼が俺にとって大切だったか、伝えることさえできなかった。
ファン先生は、俺のそばに座って、その記憶に涙を流し始めた俺に言った。
「大丈夫だよ、シャオ・フー、出しなさい」
俺は顔を布団に埋めて、先生に抱きしめられた。
夢はすごく鮮明で、まるで昨日のことみたいだった。
彼が俺を元気づけようと買ってくれたアイスクリームの味も覚えてる。
あの日、ブライアントがどれだけ約束を守ろうとしたか、ドムの俺への恋心を諦めさせようとしたか、どれだけ俺が嫌な思いをしなくて済むように頑張ってくれたか、全部知ってるんだ。
でも、ブライアントはもう、将来、俺が妹だって自慢するって約束を、守ることはできないんだ。
それは、俺がもうどうしようもないんだってこと。
それを考えると、胸が耐えられないくらい痛むんだ。
なんで世界は、こんなに残酷なんだろう、神様?
その間ずっと、ファン先生は俺のそばにひざまずいて、できる限りの慰めをくれようとしていた。
「俺も彼がいなくて寂しいよ、ケイシー。
彼は素晴らし男の子で、自分の息子みたいだったんだけど、今はもっと良い場所にいるんだ。
この腐った世界から離れてね。
彼は、お前に諦めてほしいって思ってるはずだよ」
俺は首を横に振った。
ブライアントを諦めるなんて、ありえない。
彼は俺の全てで、例え今、姿が見えなくても、まだそうなんだ。
みんながどう思おうと関係ない。
彼は俺の支えで、俺は彼を離さないんだ。
永遠に。
突然、ドアをノックする音が聞こえた。
ファン先生は緊張して、俺を見た。
「誰か呼んだの?」
俺の心臓はドキドキし始めた。
もし、先生が誰も呼んでなかったら、誰だろう?
俺が首を振ると、彼は俺にじっとしてろって合図したけど、もちろん、誰もそんなことしないよね。
ファン先生はしゃがんだ姿勢から立ち上がって、歩いて行った。
俺は涙を拭いた。
涙はすぐに止まった。
俺は彼について行って、玄関まで一緒に行って、彼がキッチンに向かうのを見てた。
そして、フライパンとナイフを持って戻ってきたんだ。
『先生、分かってるじゃん』
俺はフライパンを見て、自分の良心にジョークを言った。
彼はそれを俺に渡して、ナイフをクルクル回した。
彼は人差し指を立てて、自分の唇に当てた。
俺は頷いて、フライパンを上げて、いつでも振れるように構えた。
彼はドアノブに手をかけてひねった。
俺は悲鳴をあげないように我慢した。
映画で、みんな間違ってるのは分かってるから。
フライパンを振る準備をしてたけど、おなじみの顔と声が俺たちを迎えて、俺は止まったんだ。
「うわ、ちょ、待てよ!
ピックス、俺だよ!」
俺はすぐに、フライパンで犯人を突き刺すのを止めた。
聞こえる音は、静かな森の中に響き渡った。
ファン先生は俺のことを見て、完全に混乱した様子だったけど、俺は目の前にいる男を困惑しながら見つめることしかできなかったんだ。
「レヴ?
マジで、何やってんだよ、お前!」