第95章
「レヴ? マジで、何やってんの、こんなとこで」
レヴは頭を隠そうとしていた手を下げた、と思う。
「コイツのこと知ってるのか?」ファンさんが聞いてきた。
「うん」って答えた。
「友達?」 頷いたら、レヴはファンさんの言ってること、全然わかってないって顔してる。
「お願いだから、また別の言葉で僕のことバカにしたとか、やめてよね」ってデカい声で言うから、思わず軽く笑っちゃった。
「いや、別の言葉でバカにしたわけじゃないよ」ファンさんが言葉を挟んだ。レヴのこと、じろじろ見てる。
「どっかで会ったことある気がするんだよな」って、つぶやくみたいに言った。「誰と来たって言ったっけ?」ファンさんの腕の筋肉がピクって動いて、またレヴに何かやろうとしたら止められるように構えた。
何があったか知らないけど、レヴは友達だし、傷つけさせたくない。ファンさんに数日鍛えられただけで、あいつがどうなるか、よくわかる。ろくなことにはならない。
「ああ、友達。ピクシーに連絡しようとしてたんだけど、全然返事くれなくて。いとこがナナのばあちゃんのこと知ってて、電話したら、お前らがどこにいるか教えてくれたんだよ。それで、ここにいるってわけ」って言うから、なんか怪しいんだよな。
ナナは、知らない人にそんな情報、教えるようなやつじゃない。特に、俺がやってることとか考えると。もしかして、何か信じさせることでもあったのかな?
まあ、何にしても、アイツがいて良かったのかもしれない。ファンさんと組んで、空手チョップとかじゃなくて、ちゃんと喧嘩の練習始められるし。マでバカみたいに思えてきたんだよね。
「シャオ・フー、名前、教えてないのか?」
「うん」
「心配した方がいいのか?」ファンさん、ちょっと眉間にシワが寄ってる。レヴのこと、信用してないってことだな。「うん」
あいつが、あの返事について、もっと色々聞きたがってるのはわかった。多分、俺がレヴのこと、本当に信用してるのか知りたかったんだろうけど、正直、俺もまだわかってない。疑う気持ちは、警戒心からきてる部分が大きくて、ブライアントも色々教えてくれたけど、誰でも簡単に信用するのはやめろってのは、教えてくれなかった。
シフと話してる間、レヴは壁に頭打ちつけたいような顔してたから、同情した。中国語なんて、わかんない人にとっては、黒板をフォークで引っ掻くような音に聞こえるんだから。理解するのも難しいし、覚えるのはもっと難しい。もし、お母さんが昔の近所の人に、子供の頃から教えてもらってなかったら、中国語で一言でも喋るやつがいたら、口叩いてたと思う。
でも、誰にも理解されたくない時に話すには最高の言語だけどね。ブライアントと俺は、親をイライラさせるために、いつも中国語で話してたんだ。俺たちが中国語で話し始めると、毎回、親は荷物を持って部屋を出て行くから、マジで笑えた。
「で、お前の友達はどこだ?」ファンさんのアクセントが濃くなって、俺はすぐに警戒した。あいつのアクセントが出ると、ロクなことがない。
ブライアントを追いかけてファンさんの家に行った時、泊めてもらったのを思い出した。
道に迷った感じの感じ悪いハイカーが、ファンさんの小屋に迷い込んできたんだ。最初は道案内求めてただけなのに、なんか偉そうな態度を取り始めて、ブライアントのことバカにし始めたんだよ。
俺はブライアントの前に飛び出して、兄のことバカにし始めた男を睨みつけた。ハイカーは俺よりずっと背が高くて、滑稽だっただろうな。アイツが俺を睨みつけて、触ろうとした瞬間、ブライアントが俺の腰を掴んで、男の手が届かないところに隠してくれたんだ。ファンさんが、男に出て行けって言った時のアクセントは、地元の人だとは思えないほど濃くて。それから、ファンさんのアクセントが濃くなると、俺は体が硬直して、警戒するようになった。
もし俺が同じ目にあったら、マジで怖かっただろうし、ハイカーには気の毒だった。幸い、ファンさんに腕を掴まれただけで、アザができた程度で済んだんだ。
「ああ、どっか近くで、テントとか張ってるんじゃないかな」レヴは気にせず、周りを見ながら答えた。俺はそれ聞いて、眉毛上がったよ。
「お前ら、ここでキャンプするつもり?」
どう思えばいいかわかんないけど、レヴは友達だし、大丈夫だよな?でも、ファンさんはそうは思ってないみたいで、レヴに色んな質問を浴びせてた。
「いつになったら、お前らのいた場所に帰るんだ?」ファンさんの腕を軽く叩いた。予想通り、筋肉ムキムキで硬い。あいつの年齢であれはすごいよ。
「失礼なこと言わないで、シフ」って小声で注意した。俺の言ったこと、聞こえてないか、無視したかのどっちかだな。
「何にしても、こんな時間にノックするような用事じゃねえだろ」って睨んでやった。あいつ、普段はこんなに失礼なやつじゃないのに。最後に会った時は、結構礼儀正しかった気がする。
「ああ、ごめん。ただ、ピクシーが本当にいるのか、間違えてないか確認したかっただけなんだ」
「わかったなら、おやすみ」って、ファンさんが俺を家の中に押し込んで、レヴの顔にドアを閉めるように会話が終わった。