第203章
さっきケイシーを降ろした場所に車を停めて、車から降りたんだ。ケイシーが立っている玄関まで小走りで行ったら、数メートル後ろに友達がいて、妹のバッグみたいなのを手に持ってた。
ケイシーと目が合って、ケイシーは歩き始めた。まっすぐ前を見て、すごい勢いで歩いてくるから、表情が読めない。俺は速度を落として、ハグしようと腕を広げたんだけど、ケイシーは俺を通り過ぎて、代わりに車の方に向かって歩き出した。振り返って、歩き続けるケイシーの後ろ姿を見てから、友達の方を向くと、ケイシーの荷物を渡された。
ケイシーの友達は俺を見て、首を横に振って、どれだけ酷かったか教えてくれた。ケイシーのバッグを受け取って、車に向かって歩いている妹の後を追いかけながら、その歩みはまるで、背負うには重すぎる荷物を持っているようだった。そこで、ケイシーが裸足だってことに気づいたんだ。
ヒールは持ってないし、友達も持ってなさそう。余計に心配になる。
中で何があったのか、すごく知りたかったけど、本人が話したくない時に無理強いするのはやめとくべきだって分かってた。
車に乗ってから、カバンを後ろの席に置いて、一瞬ケイシーの方を見て、すぐに泣き出したりしないか確認したんだ。ケイシーは俺と目を合わせようとしないから、シートベルトをしてくれって無言で言ってるんだと思って、俺もシートベルトを締めて、運転することにした。
ケイシーは、前方の道路か窓の外の景色に視線を固定したままで、何も言わない。
俺は黙って、話したい気持ちを抑えて、時々ケイシーが大丈夫かどうか確認するくらいにした。っていうか、大丈夫って言える状態じゃないだろ。まるで導火線のない時限爆弾みたいで、いつ爆発するのか分からない。
もう何回かケイシーを見た後で、パーティーに行く前にしてたメイクが全部落ちてることに気づいたんだ。
怒りも悲しみも見せない。ただ静かなだけ。
しばらくすると、シートに座ったまま、体をひねってシートベルトを外し、窓の下に頭を乗せてた。
もっと楽な体勢があるだろうに、何も言わなかった。ケイシーの目が閉じるのを見て、その夜、妹についてもう一つ気づいたことがあるんだ。なぜか、パーティーにいた数時間で老けたように見えた。疲れてて、ほとんど諦めてるような感じだった。
何に対してなのか、分からなかったし、知りたいとも思わなかった。
ケイシーがどんなに精神的に消耗しているか見ていられなくて、黙って寝かせてあげた。このパーティーに行くって言い出した日から、ずっと調子が悪そうなんだよな。俺と喧嘩したことだって、きっと嫌だっただろうし。それに、ケイシーだって、本当は行きたくなかったはずだし。
アイスクリームを買いに店に寄らないとって心の中で思った。冷凍庫に残ってるやつじゃ、妹を元気づけるのに足りないだろうし。
今夜は意外と道に車が少なくて、アクセルを踏み込んで、車は誰もいない道を走り始めた。家までそんなに遠くない。
突然、遠くに光の塊が見えてきた。ヘッドライトみたいだけど、道路のどこにあるのか不思議だった。ヘッドライトの位置からすると、その車は道路の真ん中を走っていて、両方の車線を半分ずつ占領してるみたいで、ありえないだろ。
単一の車のヘッドライトじゃなくて、バイクのヘッドライトじゃないか確認するために目を細めた。
いや、絶対バイクじゃない、ヘッドライトはどんどん大きくなってるし、距離も一定だ。
ヘッドライトがどんどん大きくなって近づいてくるのを見て、すごいスピードで俺たちに向かってきてるのが何なのか分かった。目が大きくなるのが分かったし、心臓がドキドキし始めた。悪いことが起こりそうな嫌な予感が胸の中に膨らんでいくのが分かった。
トラックが向こうから猛スピードで突っ込んでくるのも理由の一つだし、クラクションを何回か鳴らしても動かないのも理だ。両方の車線を占領していて、避けるスペースがない。
「マジかよ…」俺はつぶやいて、トラックに向かってクラクションを鳴らして、こっちに向かってるから車線に戻ってくれって伝えた。
でも、トラックは少しも動かない。スピードを落としたり、避けたりする気配もないし、俺たちとの距離が数秒でなくなるって分かった時、ケイシーを起こそうと手が伸びたんだ。
ケイシーの膝を激しく揺さぶって、「ケイ!起きて!」と叫んだ。声が震えるのを抑えられなかった。できる限りスピードを落としたけど、トラックはスピードを上げてくるみたいだった。
ケイシーの膝を揺さぶり続け、道路から目を離さなかった。ケイシーがシートベルトを締め直して、体を丸めてできる限り身を守ろうとするのを感じるまで。
ハンドルを強く握って、手が震えるのを抑えようとした。心臓は胸に張り付いて、痛いくらいだった。喉に塊が詰まって、目の前のヘッドライトが大きくなるのと同じ速さで大きくなっていった。
助手席に乗るなら、運転席の後ろが一番安全だってことわざがあるのを知ってる?事故が起きた時、運転手はまず自分のいる側の車をぶつけないようにする本能があるから。だから、運転席の後ろに乗っていれば、運転手がどちらの側をぶつけるかコントロールできれば、安全な側に座ってることになるんだ。
俺はハンドルを強く握り、最後の数秒でシートベルトを外して、ケイシーが座ってる方にハンドルを切り、ケイシーの体に覆いかぶさって、妹を守るように自分の体を覆った。衝撃を感じ、世界がひっくり返って回り始めた。恐怖で目をぎゅっとつぶったまま、重力のなすがままに落ちていった。
ケイシーの叫び声と俺の叫び声、そして車がアスファルトに擦れる音だけが聞こえて、その後に大きな耳鳴りが聞こえてきた。