第170章
アダムが隅の小さなテーブルの上にあるステレオに歩いて行くまで、それがそこにあったことに気づかなかった。すぐに、'Rewrite the stars' が静かに流れ始めて、さらに困惑した。
~ You know I want you
It's not a secret I try to hide
I know you want me
So don't keep saying our hands are tied ~
歌詞が胸に引っかかって息を奪われるように、心臓が喉までせり上がってくるのを感じた。
彼は知ってたの?
「アダム?」 もう一度彼に尋ねた。
彼の背中はまだ私に向いていて、このモヤモヤに窒息しそうになり、何か皮肉なことを呟きたくなった。
永遠のように感じた後、アダムはついに私の方を向き、私たちとの距離を縮めるために二、三歩歩いた。
「ケイシー」とアダムは話し始め、私の手を握った。その仕草に心臓が跳ねた。
繋がれた手を見てから、彼の顔に戻り、早く言ってよ!って感じだった。
ロマンチックでしょ、知ってる。もうわかると思うけど、私はこの世で一番せっかちな人間じゃないんだから。
「ひどいことを全部君に非難して、記憶を失くした後にどんなひどい人間だって君を決めつけたことに対して、ちゃんと謝ってないと思うんだ。
「君をがっかりさせたくないから、今言うね。僕が記憶を取り戻せるかどうか、わからないんだ。事故前のこと全部、思い出すことができるかどうかわからない。今の僕が、以前の僕に戻れるかどうかわからないんだ。
~ What if we rewrite the stars...
Say you were made to be mine. ~
「でも、わかるのは、君と新しい思い出を作りたいってこと。記憶を失くしてから作った良い思い出を思い出したい。もっと君と記憶を作りたい。確実にわかるのは、君がもう一度恋に落ちるような人になりたいってことなんだ」
~ Nothing could keep us apart.
You'd be the one that I was meant to find. ~
最後の言葉で息が止まり、アダムを見て目を見開いた。いたずらっぽさがないか、このことがドッキリだってことを教えてくれるような光を探した。
でも、何も見つからなかった。
~ It's up to you and it's up to me
No one can say what we get to be ~
「僕はもう同じじゃないし、たぶん永遠に変わらないかもしれないけど、君と知り合って数ヶ月しか経ってないのに、あの頃のアダムが君に何を見ていたのかがわかったんだ。君がどれだけ激しく、無私の愛で他人を愛しているか、それが君の最も称賛すべきところだと思う。君がどれだけ他人に思いやりを持っているか、驚くべきことだし、君がどれだけ許せるのか、人間かなって思ってしまうよ」 アダムは私の目に向けながら、髪の毛を耳の後ろにかけた。
小さいことでも見逃したくなくて、目を逸らすことすらできなかった。
「ケイシー・ジョンソン、君に夢中なんだ」 アダムは私の目を見つめながら囁いた。
今溶け出すって言ったこと覚えてる? 私の内臓はグチャグチャになったとでも思ってて。
どうやら、彼はまだ話し足りないみたい。「僕の彼女になってくれない?」
私、死んだわ。
溶けたメチャクチャだよ。
グチャグチャ。
もちろん、イエスって言った。こんな男にノーって言うやつがいる?
今度はアダムを見上げたら、私を見ていた。
彼の笑顔は目に触れて、その端をくしゃくしゃにした。私はどんなに偏っているかもしれないけど、神様、この男は完璧だった。
私は寄り添い、彼の唇を捉えた。彼の唇は柔らかくて誘うようで、どれだけ感謝しているかをキスに込めてみた。
なんだかんだ色々なことがあったけど、彼は私のそばにいた。
人生は上向きで、私はそうありたいと思った。